カエターノ・ヴェローゾを男ひとりで聴いた馬鹿!

putchees2005-05-26


今回は女にモテる音楽です、スミマセン


今回はイレギュラーです。


女の子にモテる音楽なので、
通常のレビューとは別だと思ってください。
ぼく自身の一種の備忘録みたいなものです。
したがって、ごく手短かにぱっと済ませます。

きょうもライブ報告です


カエターノ・ヴェローゾCaetano Veloso LIVE IN JAPAN2005
5月24日(火)19:20〜21:10
有楽町・東京国際フォーラム ホールA

ミュージシャン


Caetano Velosoカエターノ・ヴェローゾ(vocal guitar)
Jaques Morelenbaumジャキス・モレレンバウム(cello)
Lula Galvaoルーラ・ガルヴァン(guitar)
Pedro De Saペドロ・ヂ・サー(guitar)
Jorge Helderジョルジ・エルデル(bass)
Carlos Balaカルロス・バーラ(drums)
Leonardo Reisレオナルド・ヘイス(percussions)

南半球最高のシンガー!?


ブラジリアンポップス(MPB)界最高のスター、
カエターノ・ヴェローゾが8年ぶりに来日しました。


名古屋を皮切りに、大阪、福岡を回り、
最後が東京公演だそうです。


カエターノといえば、キラ星のごとく才能の集まる
ブラジル音楽界の中でも、もっともセクシーで、
もっとも格調高く、もっとも豊かな表現力をそなえたシンガーです。


女はもちろん、男でも、いちど彼の歌を聴けば、
たちまち目がハートになってしまうことでしょう。


ブラジル最高のシンガーというと、
ジョアン・ジルベルトJoao Gilbertoを
思い浮かべる人がいるかもしれませんが、
フェロモンの強さやカリスマ性、そして活動の幅広さなどを見れば、
現役のミュージシャンでカエターノ・ヴェローゾを超える存在は、
ブラジルはおろか、イベロアメリカには存在しません。


いってみれば、もっとも女の子にもてそうな音楽です。
このレビューでは紹介するべきではありません。
さあ、早く終わらせるために先を急ぎましょう。

巨大ホールの大観衆をひとりで魅了


旧都庁舎跡地にできた東京国際フォーラムへ出かけるのは
初めてでした。フォーラム内のホールAに入ってみてびっくり。
これほど巨大なコンサートホールは見たことがありません。
当然ですが、会場はほぼ満席です。


こんなところで、ほんとうにひとりで歌うのか?


歌いました。
堂々と。実に2時間近く。


コンサートは、7時過ぎに始まりました。
カエターノの弾き語りで始まり、
続いてバックバンドを交えての演奏です。


バンドは、アコースティックギターがひとりと、
エレキギターがひとり、ベースとチェロ、
それにパーカッションとドラムスという編成です。


バンドの主導権を握っていたのはチェロでした。


カエターノは、まったくの無伴奏から、
ギター弾き語り、チェロやベースとのデュオなど、
さまざまな編成で、休みなく歌い続けます。


英語の歌詞と、ブラジル語(ポルトガル語)の歌詞と、
ほぼ半々という印象でした。


外タレのコンサートというと、
1時間とか、ときには45分とか、
そんな短時間で終わってしまうことがあるそうですが、
カエターノは、たったひとりで、ほぼ2時間、
朗々と歌い続けたのです。


大ホールに、カエターノの比類なき声が響き渡ります。

声もパフォーマンスも最高


歌詞や曲のすばらしさ、サウンドのユニークさなど、
彼の音楽の魅力はさまざまですが、
なによりも彼の歌声自体がいちばんの魅力です。
いったいほかの誰にこんな声が出せるでしょう?


消え入るようなピアニッシモからフォルティッシモまで
あまりに豊かなダイナミクス
静から動へ激しく揺れ動く声の表情、
清らかさから荒々しさまで完璧にコントロールされた音色。


その歌声には、およそ地上に生きる人間の
感情のすべてが集約されているようです。


ステージ上でのカエターノのパフォーマンスもまた、
すばらしいものでした。


これは、いくらCDで聴いても一生わからないでしょう。
歌いながらのなにげない動きが、まるで計算しつくされた、
バレエの振り付けのように感じられます。
彼の一挙手一投足に、ぼくたちの目は釘付けにされてしまうのです。
彼こそ生まれついてのカリスマ、
正真正銘のスターなのだと感じられました。


ステージの最後は、名曲中の名曲
エストランジェイロEstrangeiro」で締めくくられました。


冒頭から、アンコールの最後の歌まで、
すべての聴衆は身も心も蕩けるような思いだったに
違いありません*1


9000円どころか、10万円払っても高くない、
そう思わせる最高のライブパフォーマンスでした。


そしてデートに最適のコンサートでありました。


こんなコンサートに男ひとりでウジウジと出かけたぼくは、
やっぱり女の子にはまったくもてそうにありません。

自己に忠実だからスバラシイのだ


最後に「またか」と思われるかもしれませんが、
いつもの繰り言を書いておきます。


カエターノの歌は、圧倒的に濃厚な「ブラジル」を感じさせます。
カエターノの美声は、いうまでもなく彼個人の天才によるものですが、
その中には、ブラジル音楽の豊饒な伝統が息づいています。


彼の歌はブラジル的だからスバラシイのです。
ブラジル的であることを極めているから、
世界に通用する普遍性に到達しているのです。


カエターノは、自らのブラジル人としての
アイデンティティに忠実なのです。
だから、すばらしいものができるのです。


「ブラジルっていいな〜」なんて、
ヨダレを垂らしている場合じゃありません。


彼の音楽がスバラシイと思うなら、
これを読んでいるあなたは、ぜひあなた自身の音楽をやってください。
日本人としてのアイデンティティに根ざした、
「日本的であることを極めて、世界に通用する普遍性に達した」
ホンモノの音楽をつくってください。


そうすれば、世界中の人が、あなたの声を聞くために、
大ホールを埋め尽くしてくれることでしょう。


あとはあなたの才能と努力次第です。
どうかがんばってください。


間違っても、ブラジル音楽のまねごとなんてしないでください。
あなたは日本人、カエターノはブラジル人。
あなたにはあなたの道があるはずですよね?*2

*1:個人的には、アルバム「シネマ・トランセンデンタルCINEMA TRANSCENDENTAL」からの2曲が最高でした。

*2:備忘録のつもりだったのに、つい、いつものアジテーション調になってしまいました。