【番外編】ウィーンでベートーヴェンを聴いてみた

putchees2007-01-28



お正月に、ウィーン
オーケストラを聴いてきました。


といっても、
ウィーンフィルWiener Philharmonikerの
ニューイヤーコンサートではありません。


ウィーン交響楽団Wiener Symphonikerのほうです。


プログラムは、
ベートーヴェン交響曲6番(田園)と、
ヴァイオリン協奏曲。


指揮はレナード・スラットキン
ヴァイオリン独奏はアンネ・ゾフィー・ムターでした。


ベートーヴェンは別に好きじゃないのですが、
たまには悪くないでしょう。


「もてない音楽」ではないので、
番外編としてご報告いたします。

今回はコンサート報告です


【今回のコンサート】
Theater an der Wien : Inauguration2007


【日時】
2007年1月7日19:30-21:30
アン・デア・ヴィーン劇場Theater an der Wien


【曲目】
ベートーヴェンLudwig van Beethoven作曲
交響曲6番「田園」(1807/1808)
Symphonie Nr.6 F-Dur Op.68 Pastorale
●ヴァイオリン協奏曲(1806)
Konzert fur Violine und Orchester D-Dur Op.61


【ミュージシャン】
管弦楽ウィーン交響楽団Wiener Symphoniker
指揮:レナード・スラットキンLeonard Slatkin
ヴァイオリン独奏:アンネ・ゾフィー・ムターAnne-Sophie Mutter

観光旅行のついで


それにしても、もてない音楽好きのぼくが
ウィーンでベートーヴェンとは、らしくない感じです。


観光旅行に出かけたついでに、
現地で音楽でも聴こうかという程度の動機です。


しかし、外国のオケを生で聴くのは初めてなので、
楽しみです。


さて、チケットはネット予約でした。
1階のいちばん後ろの座席で、約8000円。


指揮者は当初、アンドレ・プレヴィンの予定だったのですが、
直前で変更されてました。


ムターとプレヴィンは昨年まで夫婦だったので、
興味深い共演になるはずでした。ちょっと残念です。

ベートーヴェンゆかりの劇場


会場はアン・デア・ウィーン劇場
なんでも、ウィーンでいちばん古い劇場で、
ベートーヴェン交響曲3番エロイカ)が初演された場所だそうです。*1


(アン・デア・ウィーン劇場)


そんな由緒正しい場所で、
ベートーヴェンの曲を聴くなんて、
まさかそんなことがぼくの人生に起こるとは思いませんでした。


この夜は、劇場の今年最初のコンサートだったようで、
ヨーロッパ中からセレブな音楽ファンが集まっていたようです。


体の大きな白人に囲まれて、
チビの東洋人のぼくは、いかにも情けない気分。
ロビーの隅っこで、ちびちびシャンパンをすすってました。


さすが、200年の時を経た劇場だけあって、
まるで映画アマデウスに出てきそうなゴージャスな雰囲気。
座席は狭いのですが、
バルコニー席がステージをぐるりと囲んでいます。


このコンサートの数日前に、
プラハの国立オペラ劇場でバレエ*2を観たのですが、
観客のマナーがあまりに悪くて閉口しました*3
しかし、この夜はそんなお行儀の悪い客はいませんでした。

欧州のオケはホントにうまいの?


気になるのは、ヨーロッパの一流オケ
実際にどんな音を出すのか、ということです。


果たして、ほんとうにうまいのか?
ひょっとして、日本のオケと大差ないんじゃないの?


日頃の疑問を解決するチャンスです。


来日公演で聴いてもいいのですが、オーケストラというのは、
やはり地元でこそ実力を発揮するはずですからね*4


しかも、ベートーヴェンゆかりのウィーンで、
地元の楽団が奏でるベートーヴェンを聴く。
いわば彼らの十八番
これ以上にいい機会はありません。


(ウィーン交響楽団


さて、小さな舞台にオケのメンバーが揃います。


お、日本人がいます。
首席チェロ奏者の吉井健太郎です。


さあ、どんな音が鳴るでしょう?

これがクラシックか…


1曲目の「田園」で、おなじみのメロディが鳴った瞬間、
びっくり仰天しました。


げげ!!


なんだこりゃ。


ぜんぜん違う。


うますぎる。


なんというか、技術も音楽的内容も、
日本のオケとはまるで違います。


比べるのがばかばかしいくらいです。


ホールの音響の違いとか、
ふだんと違う状況(旅先)で聴いているということを
念頭に置いて、つとめて客観的に音楽を聴こうとしたのですが、
どう考えたって彼らのほうが上です。


日本のオケがこの劇場に来て同じ曲目をやったとしても、
こういう風には鳴らないだろうという気がしました。


参りました。

エキサイティングな演奏


ストリングスが、まるでひとつの楽器のように鳴り響きます。
管楽器の音色のすばらしさ、
そしてティンパニの正確さにも舌を巻きました。


退屈して居眠りするかもしれないと思っていた
「田園」ですが、とてもエキサイティングでした。


たぶん、オーケストラがこれだけうまいと、
プレヴィンだろうとスラットキンだろうと、
誰が指揮をするかなんて問題じゃないでしょう。


このオケなら、たとえどんな曲でも、
そうとう高い水準にまとめてしまうに違いありません。


ヴァイオリン協奏曲もエキサイティングでした。
ムターの弾くヴァイオリンは文句なく素晴らしかったのですが、
ぼくは、それ以上にオケの鳴らす音にうっとりでした。


これはCDじゃわからないでしょう。
クラシック音楽は、やっぱりホールで体験するもので、
CDなどの録音は、音楽体験の一部を切り取っただけですから。


(アンネ・ゾフィー・ムター)

日本人はクラシックなんてやめたら?


宿へ帰る道すがら、
ぼくは真剣に考え込んでしまいました。


「日本のオケを100年や200年鍛えたって、
永遠にあんな風には鳴らないんじゃないか?


「日本人のクラシック演奏なんて、しょせんまがいもの
あたかも西洋人が歌舞伎をやるみたいに、
はたから見ると珍妙なシロモノじゃないのか?」


「極端な話をすれば、日本人は西洋音楽なんてやめて
長唄とか雅楽に専念したほうがいいんじゃないのか?」


ほとんど絶望的な気分になりました。


まあしかし、日本人がいまさらクラシック音楽
捨てることはできないでしょう。


もしそうだとすれば、
日本のオケは、西洋のオケのマネなんてしないで、
独自のアプローチを考えた方がいいんじゃないでしょうか。


つまり、西洋のオケにマネできないような
得意技を身につけるべきだということです。
(具体的に、それが何かはわかりませんが)


そうでもしないと、日本のオケは、永遠に、
西洋オケの演奏がもたらす感動を超えることは
できないような気がするのです。


日本のクラシック演奏家
ほんとうにそれがわかっているのでしょうか?


そういうことを考えてしまうくらい、
ショッキングな音でした。


もっとも、一回聴いただけじゃ、実際のところはわからないので、
そのうちまたヨーロッパで
一流オケの演奏を聴いてみたいと思います。


というわけで、番外編はおしまいです。
次回からまたもてない音楽をご紹介します。


(この稿完結)

*1:ベートーヴェンは、この劇場の専属作曲家をしていたこともあります

*2:プロコフィエフの「シンデレラ」。

*3:どうやらクラシックもバレエも好きではない観光客が多かったようです。

*4:スポーツと同じように、ホームとアウェイの違いってありますよね?きっと。