佐藤允彦の知的なピアノを聴く!

ライブ報告です


●今回のライブ
佐藤允彦トリオ」
佐藤允彦(ピアノ)
加藤真一(ベース)
村上寛(ドラムス)
2010年2月19日(金)新宿ピットイン

日本一(?)知的なジャズピアノ


佐藤允彦(さとうまさひこ)をライブで聴くのは2回目です。


最初はピットイン40周年のコンサートでした。


でも、そのときのことはほとんど覚えてない。


今回はよかったですよ。
アノトリオで、たいへんレベルの高い演奏を聴かせてくれました。


ぼくはひさびさにライブでジャズを聴いて、
やっぱりジャズはいいなあ、
スリリングな音楽だなあと思いました。


佐藤允彦は、知的で多才で、
なんでも弾けるピアニストというイメージです。
CDだと、フリージャズをやってるのしか、
聴いたことがないけど、鋭く、
冷徹な音を出す人だなと思ってました。


今回のステージでは、
普通のジャズをやってくれました。


さすが、うまい。
ものすごくうまい。


非常に複雑なオリジナル曲を、
難なく弾き切ってしまう。
それだけでなく、即興でもって自由奔放にふくらませる。


アドリブが激しくなると、調性の殻を破って、
「向こう側」に行ってしまいそうになる。


でも、イキそうでイカない。


この「寸止め」感がたまらない。
とにかくスリリング。


これは、フリージャズを経験した
ミュージシャンならではだと思ったね。


佐藤允彦は、調性の「向こう側」の響きを知り尽くしている。


だが、この日は、あえて調性の「こちら側」にとどまっている。


音楽性が真に豊かなミュージシャンは、
ときに、それを限定することで、
かえって表現の幅を広げることができるのだな。


まったくニクイ。
こういうのを達人と言うのでしょう。


後半のセットは、なぜか、
噺家の出囃子のアレンジ集でした。
長唄の「元禄花見踊」とか「老松」とか。
佐藤允彦は昔から落語が好きらしい。
粋な江戸っ子だね。


日本音階の旋律を、
たくみなアレンジでジャズにしていたよ。
(複雑なコード進行を付けたり、あるいはほとんどワンコードにしたり)


こういうのを聴くと、
ジャズの「曲」というのは、単なる素材なので、
メロディなんてなんでもいいのだという思いを新たにする。


ただ、一曲が短いので、アドリブの部分が
燃え上がらないうちに終わってしまう。


その点がちょっと不満だったかな。


でも、全体にはとても満足しました。


彼のフリージャズも、いちど
ライブで聴いてみたいと思いました。


この日のピットインは、上品な感じのお客が多かった気がします。
彼の音楽も、聴き手も、センスがいいなと思った次第。
(自分は除いてね)


はたしてこれは「もてない音楽」なんだろうか?
こんなにカッコイイのに?
もしこれが「もてない音楽」なら、世の中間違っとるよ