アコーディオンで弾くバッハに驚く

putchees2012-04-10

今回のCD


「J.S. バッハ:イギリス組曲第2番, 第3番, 第5番(ディメトリーク)」
BACH, J.S.: English Suites Nos. 2, 3 and 5 (Dimetrik)
オーストリア・Gramola Records 98819)


ミュージシャン:
ヴォルフガング・ディメトリーク Wolfgang Dimetrik (アコーディオン)


ナクソスミュージックライブラリー)
http://ml.naxos.jp/album/Gramola98819

息づかいが聞こえる楽器


アコーディオンは不自由な楽器という印象です。


なにしろでかい
大型のピアノアコーディオンだと10キログラム以上あるんですよね?


それに蛇腹を自分で動かさなくちゃならない。


しかも、鍵盤にさわれるのは片手だけ。
片手はボタンでベースかコードを演奏するわけですよね。


据え置きのオルガンにくらべて、なんと不自由なことか。
(オルガンなら、両手に加えて足まで使えるし)


ぼくはちょっと触ってみて、これはダメだ自分には演奏できないと思いましたね。


しかし世の中にはすごい人がいるもので、今回ご紹介するCDでは、バッハのイギリス組曲アコーディオンで弾いちゃってる。


ただ、クラシックのアコーディオンのアルバムって、感心した覚えがない。
言葉は悪いけど、不自由な楽器でご苦労さんよくやったね、という以上の感想にならない。
これもつまらんかなあと思って聴いたわけです。


このアルバムのアコーディオン奏者はWolfgang Dimetrik。
1974年オーストリー生まれだって。


もちろん原曲そのままでは演奏できないから、この人自身が編曲してるんだけど、これがいいんだわ。


まず編曲によって響きがシンプルになって、構造がすっきりするってこと。


しかし、なによりいいのは、「息づかい」が聞こえてくるところ。
もちろん、アコーディオンは管楽器じゃなくて蛇腹楽器だから、奏者の息づかいなんて聞こえないわけです。


では何か。それはアコーディオンそのものの「息づかい」。
つまりアコーディオンって蛇腹を動かすでしょう、それって、楽器の呼吸、つまり息づかいだと思うんですよ。


このアルバムを聴くと、アコーディオン息継ぎをしながらフレーズを奏でているのがわかる。
(実際にはプレイヤーが蛇腹を動かしてる)


それが、まるで生きているように感じられるわけです。


あたかも管楽器でバッハを吹いているように聞こえてくるんです。ほんとです。
聴き慣れたバッハが、まるで別の生命を得たように響くんですよ。
これは新鮮ですよ。いや驚いた。


アコーディオンという楽器の音を聴いて、そんなふうに思ったのは初めてです。
(これまでは、不自由さばかり感じていたので)


オルガンよりはるかに面白い。
アコーディオンならではの面白さってものをぼくは初めて知りました。


この感じは、実際に聞いてもらえたらわかっていただけると思います。


編曲も見事なんだと思うし、演奏も見事。
じっさい、どうやってアコーディオンで弾いてるのか想像もつかない。


キワモノかなと思ったら、いい方に裏切られた
こういう出会いが楽しいんですよね、音楽は。


アコーディオンによるバッハ、ぜひ一度おためしください。
ただもちろん、こんなのを聴いてても女の子にはもてないけどね!