大澤壽人と大栗裕の名曲を聴く。
今回のコンサート
オーケストラ・ニッポニカ第22回演奏会
「大阪に生まれた作曲家たちによる交響作品展」
2012年9月2日(日)14:30-16:30
(四谷・紀尾井ホール)
清水脩:交響曲第3番(1960)
宅孝二:ロンド・カプリチオーソ〜小オーケストラのための
大澤壽人:トランペット協奏曲(1950)
大栗裕:大阪俗謡による幻想曲(1956年版)(1956/1970)
指揮:寺岡清高
トランペット:神代修
管弦楽:オーケストラ・ニッポニカ
大澤&大栗
オーケストラ・ニッポニカの演奏会に行ってきました。
アマチュアですが、日本の近現代作品を発掘して演奏してくれる貴重な団体。
ぼくはいつも応援しています。
さて今回のプログラムは、関西に関係のある作曲家の特集。
一曲目は清水脩(1911-1986)のシンフォニー三番。
初めて聴く作曲家でしたが、なかなか複雑な作品。
とくべつ印象的というわけではなかったけど、これくらいの曲なら、ナクソスあたりを探せば、いくらでも録音されていそう(英国とか合衆国の作曲家なら)。
ところが、日本だと、初演以来誰も見向きもしないということになる。
情けないったらない。
2曲目は宅孝二(1904〜1983)。名前しか知らなかったです。
これはあっという間に終わった。
さて、3曲目は大澤壽人(1906〜1953)。
このブログでも何度も取り上げました。神戸が生んだ偉大な「忘れられた」作曲家。
トランペット協奏曲は、昭和25年の作品。
このジャンルは、現代ではひどくマイナーな存在。
トランペット協奏曲って、実は(バロックを例外に)ほとんどないんですよ。まして、日本人の作品となると、ぼくは知らない。
彼は合衆国時代に、コントラバス協奏曲(これも珍しい)を書いてるらしい。
大澤の客気というか、新しいジャンルへの強い意欲が感じられます。
面白くないわけがないと思って聴いたら、やっぱり面白かった。
きょうのソリストは、すでに録音もしてるらしい。
アカデミックに洗練された技法と、軽妙さ。
そして高度な技巧を要求する独奏トランペット。
ジャズを基本にした第二楽章があっという間に終わってしまうセンスの良さ。
これはすごい。
さすが大澤壽人。
まいりました。
この曲を眠らせてきたことを、日本人は恥じなければならない。
そしてオーケストラ・ニッポニカに感謝しなければ。
さいごは大栗裕(1918〜1982)の「大阪俗謡による幻想曲」。
この曲、ベルリンフィルと演奏するために、朝比奈隆が委嘱したんだね。
英語のタイトルは「Fantasia Osaka」らしい。
大阪という街の誇りがこもった題名。思わず胸が熱くなる。
この曲はナクソスの「日本作曲家選輯」に入ってる。
下野竜也&大阪フィルの演奏。まずはこれ聴いてほしいな。
日本の、大阪の、メロディとバイタリティと美意識が詰まった、名曲だと思います。
ぼくは生で聴くの、今回が初めてだった。
感動しました。
伝統音楽を堂々とモチーフに使って、明るく元気な管弦楽曲を作る。
ほかの国では当たり前のことが、日本ではなぜか「恥ずかしい」と思われてしまう。
ぼくはそんな傾向に憤りを覚えます。
大栗は、この曲の初演にあたってこう書いたそうです。
「保守反動と呼ばれることも敢えて辞さない古臭い陳腐な祭囃子を使ったことに、私は私のささやかなレジスタンスと、日本の伝統音楽に対する深い尊敬と愛情を含め…」
ぼうぜんとします。民族の伝統美を作品に込めることに、これだけの勇気が必要だったのだのですよ?
自分たちの伝統文化に誇りを持たない民族が、はたして偉大でありうるでしょうか?
ぼくは圧倒的に大栗裕と、彼の「Fantasia Osaka」を支持します。
こんなに美しい曲はない!
この作品は、日本で、世界で、年に何十回も演奏される価値のある音楽だ。
きょうは、貴重な原典版での演奏だったそうです。
オーケストラ・ニッポニカ、ほんとうにありがとう。
次回演奏会も楽しみです。
ただもちろん、こんな音楽を聴いていても、女の子にはぜったいにもてません。