菊地雅章を初めてまとめて聴く
ユニークな日本のジャズピアニスト
菊地雅章の名前はもちろんずっと知ってるんですが、そういえばなぜか聴く機会がなかった。
今回Youtubeでまとめていろいろ聴いて、すっかり好きになってしまいました。
なんでいままで聴かなかったんだろう?
いちばんカッコイイのがこれでした。
Kikuchi Masabumi: SUSTO (1981)
これはすごい。
ジャズとかフュージョンとか、ジャンルを超越してる。
こんな音楽はほかに聴いたことない。
いろんなミュージシャンが入ってるけど、それぞれの個性は希薄で、ひとつのサウンドしかないように聞こえる。
あえていうなら、70年代のマイルスバンドに似てる。
「On The Corner」とか。
しかし、ここにしかないユニークな音楽です。
ポップ音楽のような顔をしてるけど、これはほとんど現代音楽じゃないの?
このアルバム一枚だけで、菊地雅章は忘れられないミュージシャンと呼ばれるでしょう。
さて、この人、60年代は、こういうピアニストだったんですね。
前も紹介したんですが、これ。
Hino Terumasa and Kikuchi Masabumi: Hino - Kikuchi Quitet(1968)
カッコイイ。1965-67年のマイルスバンドのようなサウンド。
菊地雅章のピアノはハービー・ハンコックぽいんだけど、ちょっと違うよね。
ハンコックよりストイックで、より神秘的。
これが、1970年にはこうなる。
Kikuchi Masabumi: In Concert (1970)
A面はほとんど、マイルスの「In A Silent Way」だよね。
峰厚介のサックスがカッコイイ。
もちろん菊地雅章のエレピもすばらしい。
B面の妖艶な雰囲気もカッコイイ。
このアルバムは必聴ですよ。
で、こちらは78年のアルバム。
Kikuchi Masabumi: But Not For Me(1978)
「SUSTO」ほどではないけど、これも不可思議なサウンド。
BGMのように聴けるんだけど、じっくり聴くと深い。
うーん、すごいな。
60年代に渡辺貞夫のバンドにいたときは、こういうプレイをしてたんですね。
Watanabe Sadao: Fly Me To The Moon(1967)
さらにさかのぼると、こんなアルバムに参加してたんですね。
Charlie Mariano: Stone Garden of Ryoan Temple竜安寺の石庭(1963)
これかっこいいなぁ。
日本風ジャズ。チャーリー・マリアーノは、日本の音階を一種の旋法として使ってるよね。
この曲は菊地雅章の作品で、後に山本邦山と吹き込んでますよね。
Yamamoto Hozan and Kikuchi Masabumi: Stone Garden of Ryoan Temple竜安寺の石庭(1970)
こっちのほうがカッコイイよね。尺八ジャズ。
菊地雅章のピアノもいいし、ゲイリー・ピーコックのベースもすばらしい。
菊地雅章とピーコックは、こんなのも吹き込んでる。
Gary Peacock: Hollows(1971)
うーんたまらん。
そして、菊地雅章の2012年の録音がこれ。
Kikuchi Masabumi: Ballad I(2012)
枯淡の境地ですね。
もっとも、菊地雅章のピアノは、もともと饒舌ではなくて、ストイックで切り詰めた音なので、それが行き着くところまで行ったのだとも解釈できます。
うーん、つくづくすごいピアニストだ。
彼のプレイは日本っぽいと思うんですよ。
欧州のピアニストに近いのかも知れないけど、やっぱりいかほどか違う。
日本らしさを感じさせて、それでもって世界のジャズファンに愛される菊地雅章。こういうピアニストがいてくれることに感謝したいと思います。
ぜひぜひ、聴いてみてください。
ただ、こんなん聴いててももてないのかも。