ニューヨークフィルとサロネン

初のニューヨーク


【今回のコンサート】
「Salonen, Sibelius, and Ravel
日時:2013年11月1日11時
会場:エイヴリー・フィッシャー・ホール Avery Fisher Hall(NYC)


【ミュージシャン】
管弦楽:ニューヨークフィルハーモニック
ヴァイオリン:リーラ・ジョセフォウィッツLeila Josefowicz
指揮:エサ=ペッカ・サロネンEsa-Pekka Salonen


【曲目】
組曲マ・メール・ロワラヴェル
ヴァイオリン協奏曲(サロネン
交響曲五番(シベリウス


ニューヨークに遊びに行ったので、リンカーンセンターでニューヨークフィル聴いてきました。


サロネンが自作のヴァイオリン協奏曲を演奏しました。
これがすごく面白かった。


超高速でヴァイオリンが重音を弾き続けるタフな曲。
独奏のジョセフォヴィッツの技巧に感動。


大オーケストラにドラムセットまで引き連れて大音響のカタルシス
バルトークっぽいけど、それより、ジプシー音楽かジャズを連想させる感じ。


会場はおばあちゃんばっかりだったけど、こういうのは若い人に聴いてほしいなあ。


作曲家の自作自演以外でも、聴く価値があると思いました。
日本でもやってほしいなあ。


こういう曲です。



さて、そのほかはラヴェルの「マ・メール・ロワ」。
プログラムに「マザーグース組曲」って書いてあったから「はて?」と思ったんですが、英語だとそういうことですね。


アンサンブルがすばらしいのはもちろんですが、ここではコンサートマスターGlenn Dicterowの美音に感動しました。


で、最後はシベリウスの五番。


演奏はすばらしかったです。
弦の響きの美しさ、管の響きの鮮やかさ。どれをとっても最高性能のオーケストラという感じです。


プログラムを見たら、弦のメンバーは韓国系と中国系が多数ですね。
世界中から優秀な奏者を集めている感があります。


サロネンの指揮ぶりはさすがで、終楽章の最後のところ、ちょっと不思議なタメを作ってジャン!と終わりました。


いやあすごかった。


しかし、ぼくは改めて、シベリウスは苦手だなと思った次第です。
ふと気がついたんですが、ぼくの苦手なブルックナーシベリウスって似てるなと。


・メロディが少なめ
・繰り返しが多い


ブルックナー交響曲でおなじみの、このふたつの特徴、とくにシベリウスの五番にはあてはまるんじゃないでしょうか。


シベリウスブルックナーも、いつのまにか「あっ終わってる」って感じなんですよね。


それを再確認したコンサートでした。
演奏はすごくよかったですよ。


エイヴリー・フィッシャー・ホールは音響が悪いなんて話も聞きますが、そんなことはなくて、立派なホールでした。


プログラムを見たら寄付金がどっさりで、運営も楽だろうなと思いました。
(ニューヨークにはオケが少ないという理由もあるんでしょうが)


そして今後のコンサートカレンダーを見たら、ニールセンのシンフォニーだけのコンサートとか、ニコライ・チェレプニンの曲とか、日本では考えられないような面白そうな演奏会が目白押しでうらやましくなりました。


チケットも日本のオーケストラと同じくらいだし、ニューヨークに住んでたら毎週通いたいって思いましたよ。


まあしかし、ぼくは東京に住んでるんで、東京のオーケストラを応援していきたいですね。


ともあれ面白い体験でした。

セシル・テイラーがやってくる

2013年11月17日


いやー、びっくりしました。
セシル・テイラーが来日ですよ。
先日、京都賞を受賞したんですね。


チケット買いました。11月17日、草月ホールです。


楽しみです。
で、予習でこんなの見つけて聴いてます。



1969年、パリのライブ。
ジミー・ライオンズのアルトサックスに、サム・リヴァースのテナー。


サム・リヴァースのテナーはじつにアホっぽい


しかし、演奏自体はすばらしい。
若くて元気なセシル・テイラーのピアノからほとばしるエネルギー!


アンドリュー・シリルのドラムスもすごいね。


まあ、初めて聴く人にはなんじゃこりゃ、でしょうけど。


ライブの当日を楽しみに待ってます。
なにしろ、昨年の来日公演は中止になりましたからね。
泣きましたわ。


今度こそ、84歳の天才ジャズピアニストの演奏を生で聴きたいですわ。


もちろん、こんなん聴いてても女の子にはもてません。

菊地雅章を初めてまとめて聴く

ユニークな日本のジャズピアニスト


菊地雅章の名前はもちろんずっと知ってるんですが、そういえばなぜか聴く機会がなかった。


今回Youtubeでまとめていろいろ聴いて、すっかり好きになってしまいました。
なんでいままで聴かなかったんだろう?


いちばんカッコイイのがこれでした。


Kikuchi Masabumi: SUSTO (1981)


これはすごい。


ジャズとかフュージョンとか、ジャンルを超越してる。
こんな音楽はほかに聴いたことない。


いろんなミュージシャンが入ってるけど、それぞれの個性は希薄で、ひとつのサウンドしかないように聞こえる。


あえていうなら、70年代のマイルスバンドに似てる。
「On The Corner」とか。


しかし、ここにしかないユニークな音楽です。
ポップ音楽のような顔をしてるけど、これはほとんど現代音楽じゃないの?


このアルバム一枚だけで、菊地雅章は忘れられないミュージシャンと呼ばれるでしょう。


さて、この人、60年代は、こういうピアニストだったんですね。
前も紹介したんですが、これ。


Hino Terumasa and Kikuchi Masabumi: Hino - Kikuchi Quitet(1968)


カッコイイ。1965-67年のマイルスバンドのようなサウンド
菊地雅章のピアノはハービー・ハンコックぽいんだけど、ちょっと違うよね。
ハンコックよりストイックで、より神秘的。


これが、1970年にはこうなる。


Kikuchi Masabumi: In Concert (1970)


A面はほとんど、マイルスの「In A Silent Way」だよね。
峰厚介のサックスがカッコイイ。
もちろん菊地雅章のエレピもすばらしい。


B面の妖艶な雰囲気もカッコイイ。
このアルバムは必聴ですよ。


で、こちらは78年のアルバム。


Kikuchi Masabumi: But Not For Me(1978)


「SUSTO」ほどではないけど、これも不可思議なサウンド
BGMのように聴けるんだけど、じっくり聴くと深い。


うーん、すごいな。


60年代に渡辺貞夫のバンドにいたときは、こういうプレイをしてたんですね。


Watanabe Sadao: Fly Me To The Moon(1967)


さらにさかのぼると、こんなアルバムに参加してたんですね。


Charlie Mariano: Stone Garden of Ryoan Temple竜安寺の石庭(1963)


これかっこいいなぁ。
日本風ジャズ。チャーリー・マリアーノは、日本の音階を一種の旋法として使ってるよね。


この曲は菊地雅章の作品で、後に山本邦山と吹き込んでますよね。


Yamamoto Hozan and Kikuchi Masabumi: Stone Garden of Ryoan Temple竜安寺の石庭(1970)


こっちのほうがカッコイイよね。尺八ジャズ。
菊地雅章のピアノもいいし、ゲイリー・ピーコックのベースもすばらしい。


菊地雅章とピーコックは、こんなのも吹き込んでる。


Gary Peacock: Hollows(1971)


うーんたまらん。


そして、菊地雅章の2012年の録音がこれ。


Kikuchi Masabumi: Ballad I(2012)


枯淡の境地ですね。
もっとも、菊地雅章のピアノは、もともと饒舌ではなくて、ストイックで切り詰めた音なので、それが行き着くところまで行ったのだとも解釈できます。


うーん、つくづくすごいピアニストだ。


彼のプレイは日本っぽいと思うんですよ。
欧州のピアニストに近いのかも知れないけど、やっぱりいかほどか違う。


日本らしさを感じさせて、それでもって世界のジャズファンに愛される菊地雅章。こういうピアニストがいてくれることに感謝したいと思います。
ぜひぜひ、聴いてみてください。


ただ、こんなん聴いててももてないのかも。

やっぱり70年代の日本ジャズを聴いてる(3)

日本のジャズは宝の山


ひきつづき1970年代の日本のジャズを聴いてます。


まずはこれ。
ピアニスト、鈴木宏昌の1978年のアルバム。

Suzuki Hiromasa Trio :PRIMROSE (1978)



たいへんスタイリッシュなピアノです。
ぼくはジョン・テイラーとか思い出しちゃった。


この人、佐藤允彦や大野雄二と同じ時期の慶應義塾出身なんですね。
しかも海のトリトンの主題歌の作曲家。


これまで演奏を聴いたことがなかったのが恥ずかしい。


このアルバムはオリジナル曲ばかりかな?
どの演奏もいい。井野信義のベースもいい。


しかし、スティーブ・ジャクソンのドラムスがうるさい。デリカシーがない。
まことに惜しい。


しかし聴く価値のあることは保証します。


さて、つづいてこちら。
ベーシスト鈴木勲の74年のアルバム。


Suzuki Isao Quartet: Blow Up (1974)


どの曲もまことにカッコイイのですが、タイトル曲の「Blow Up」がいい。
烈しいジャズロックで、ベースがテーマを取る。


この生々しいサウンド
Three Blind Miceレーベルの録音はどれもいいなと思ってたんですが、それが確信に変わりました。
ベースが目立ちながらも出しゃばらない。
こういう録音はなかなかできるもんじゃないと思うのです。


このレーベルはいいですね。
ぼくはジャズ聴いて20年ですけど、これまでそれを知らなかったという事実に愕然とします。


さて、続いてこちら。これもTBMレーベル。
アルトサックス奏者大友義雄のアルバム。


Otomo Yoshio Quartet: Moon Ray (1977)


普通のジャズなんですけど、いい音色とフレーズですよね。
ベースは川端民生、ピアノは山本剛。
じつにしっかりしてて、これぞジャズという感じのサウンドです。
スタンダードのIf I should youがすばらしい。


そしてベーシスト宮本直介の74年のアルバム。


Miyamoto Naosuke Sextet: STEP!(1974)



6人編成のバンドで、アレンジも凝ってて、ビッグバンドのようなサウンド
個人的にはあまり好きなタイプではないけど、この熱っぽさには心打たれる。


サックスやトランペットもいいけど、やっぱりリーダーのベースがいい。
こういうベースは好きなんですよ。


心を静めたいときには合わないけど、ガッツが欲しいときにはいいよね。
これもTBM。なんてすごいレーベルなんでしょう!


で、最後はまた渡辺貞夫


Watanabe Sadao: Open Road (1973)



これはライブ録音の2枚組。


かなり凝ったアレンジとサウンドで、ジャズロックとボサノバが混在してる。
共演者も豪華。(渡辺文雄のドラムスと鈴木良雄のベースがいい)


しかし、なにより聴くべきは渡辺貞夫のサックス。アルトとソプラニーノを吹いてる。


とくに終盤の怒濤のソロがすごい。
ほんとうにすごい。開いた口がふさがらない
ナベサダのすごさは知ってるつもりでいたけど、なにも知らなかったのだと痛感しました。


これを聴かないのはあまりにもったいので今すぐ聴いてください。


1970年代の日本のジャズはほんとうに豊かですね。
宝の山の探求をもう少し続けます。


ただ、こんな音楽を聴いてても女の子にはもてないけどね!

1960〜70年代の日本のジャズにしびれる(2)

日本のジャズはやっぱりすごかった


前回につづいて日本のジャズをご紹介します。
Youtubeは宝の山ですね。
今回は60年代のやつも入れます。


まずはこれ。
「松本浩・市川秀男カルテット MEGALOPOLISメガロポリス



1969年のアルバム。ヴィブラフォンの松本浩と、ピアノの市川秀夫(Early Summerの作曲家!)。
1曲目はちょっと古くさいかな、と思ったら、2曲目でエレキチェンバロ(??これなんて楽器ですかね?)が出てきてしびれる。
おおカッコイイ。


ヴィブラフォンもピアノも実に洗練された演奏。
アレンジも凝ってておみごと。


つづいて、これ。
日野皓正と菊地雅章、1968年の録音。
「日野・菊地クインテット Hino-Kikuchi Quintet



これはかっこいいよね。ほとんど60年代後半のマイルスバンドのサウンドだよね。菊地雅章のピアノのユニークさが際立ってる。
この人はいったいどうやってこんなスタイルを身につけたんだろう??


さて、これ。
1975年、渡辺貞夫モントルージャズフェスに出たときのライブ盤。
渡辺貞夫 Swiss Air



す…すごい。
言葉を失う圧倒的な演奏。
なんというスピード感。まさに音の奔流。
ジャズとはこういう音楽のことです。


かつてナベサダはこんなにすごいサックス奏者だったのですね。


で、さいごにこれ。
マル・ウォルドロンが1972年に東京で吹き込んだアルバム。
トランペットは日野皓正、ドラムスは日野元彦、ベースは鈴木勲。
マル・ウォルドロン/日野皓正 Reminiscent Suite」



すばらしい…。
マル・ウォルドロンが吹き込んだ録音の中でもトップクラスに属するんじゃないでしょうか。
日野皓正、日野元彦もいいけど、鈴木勲のベースがいい。


彼は日本のミュージシャンといっぱい共演したけど、彼の音楽を受け止められる力量を持ったミュージシャンがこの国にたくさんいたからでしょう。


ほんとうに日本のジャズはすばらしい。
日本の人には、北欧ジャズとか南米ジャズとかより、まずこういうのを聴いてほしいと思いますよ。


自分の足下にあるものが見えない人は、けつまづくに違いないよ!


ただ、こんな音楽聴いてても女の子にはぜったいにもてないけどね。

1970年代日本のジャズはこんなにすごかった。

日本のジャズは昔からすごかった


少し前に福居良の「Scenery」を聴いて以来、70年代の日本のジャズYoutubeで探しては聴きまくっています。


このへんの音源を熱心にポストしている方がいて、ずいぶんお世話になりました。
そして、70年代の日本人ジャズの充実ぶりに驚倒しました。


正直、ここまですごいとは思っていませんでした。
ぼくがこれまで聴いていたのはごくごく一部だったのですね。
不明を恥じるのみです。


日本のジャズはこのころから、すでにユニークで洗練された独自のスタイルを築いていたのですね。
ほんとうにうれしくなりました。


少しでも多くの人に、そのすばらしさを伝えたいと思います。


まずはこれ。


今田勝「Green Caterpillar」(1975)


ピアニストのリーダーによるクールなジャズロックだね。
ギターがかっこいいと思ったら、若き渡辺香津美だった。
このバンドのノリはすばらしい。


つぎにこちら。
鈴木勲「オランウータン」(1975)


ジャズメッセンジャーにも一時参加していたベーシスト鈴木勲のアルバム。
これもそうとういい。まさに70年代のジャズロック
なんて洗練されたサウンドでしょう。


そしてこちら。


福村博「福村博クインテット」(1973)


福村博はトロンボーン奏者で、このアルバムは向井滋春との共作。
トロンボーン2本クインテットという野心的な編成。
前のめりでバイタリティあふれるサウンドがたいへんすばらしい。


さいごにこれ。
峰厚介「ダグリ」(1973)


若きテナーサックス奏者峰厚介と若きピアニスト板橋文夫がエネルギーをほとばしらせる傑作!!


いやもうたまらない。


Youtubeのコメントを見たら、英語で「すばらしい!」ってたくさん書いてある。
要するに、みんな知らなかっただけなんだな。


昔はネットがなかったから、日本ジャズがいかにすばらしいか、外国にはほとんど伝わらなかったんでしょう。


それがようやく伝わるようになってきたのです。
いいことじゃないですか。


でも、まず日本人が、こういう過去の先人の音源を聴くべきでしょう。
日本人ジャズをバカにしないで聴いてみてください。
日本人にしかできないジャズのユニークなかたちが、はっきりと見えるはずです。


今回紹介した音源は、どれもすばらしいものです。
ただ、こんなの聴いてても、女の子にはたぶんもてないけどね。

三上寛の「BANG!」を聴け

putchees2012-09-30

今回のアルバム


三上寛「BANG!」(1974)


(トラック)
1.このレコードを私に下さい
2.逢えてよかった
3.華麗なる絶望
4.Bang!
5.密猟の夜
6.なんてひどい唄なんだ
7.赤い馬
8.最後の最後の最後のサンバ

紹介を忘れてたアルバム


台風の夜に、ふと三上寛の「BANG!」を聴きたくなったので聴き直して見ましたが、たちまち引き込まれてしまいました。


以前紹介しようと思って、そのままになってたんですが、このアルバムはいい。


三上寛というと、どろどろの土着的な歌というイメージですが、このアルバムはすっきり聴きやすい。


もちろん、陰々滅々とした歌もあるんですが、わりとそういう色は薄め。


代わりに音楽が充実している。


なぜなら、山下洋輔トリオ(山下洋輔坂田明)が参加してるから。
山下洋輔のアレンジの才能が遺憾なく発揮されております。


とくに「3.華麗なる絶望」と「7.赤い馬」がすばらしい。



すばらしい。三上寛の歌とは思えない(?)!


「華麗なる絶望」では、山下洋輔がエレキチェンバロ?でブルージーな演奏をしています。
(残念ながらそっちの動画は見つからなかったです)


ついでに、この曲では坂田明がサックスを吹いてます。



まあ、それはともかく、トラック3と7だけでも聴いていただきたい。
三上寛はちょっと…という人にも楽しんでいただけるはずです。
もちろん、佐伯俊男のジャケットイラストもすばらしい。


しかし、言うまでもなく、こんな音楽を聴いてたら女の子にはぜったいにもてません