松村禎三の交響曲一番に打ちのめされる
今回のコンサート
日本フィルハーモニー交響楽団第642回定期演奏会
2012年7月14日(土)14:00-16:00サントリーホール(赤坂)
(ミュージシャン)
指揮:下野竜也
管弦楽:日本フィル
(曲目)
戸田邦雄:合奏協奏曲「シ・ファ・ド」
山本直純:和楽器と管弦楽のためのカプリチオ
黛敏郎:弦楽のためのエッセイ
松村禎三:交響曲一番
マツムラ!マツムラ!マツムラ!
下野竜也が日本人作曲家の作品だけを振るという。
行かないわけにはいかないじゃないですか。
地味なプログラムだけど、お客さんはたぶん半分以上入ってました。
この日の曲は、すべて日本フィルの委嘱作品。
山本直純の曲は、邦楽器群とオーケストラが一緒になって演奏するってやつ。
楽しみにしてたんですが、あまりに「昭和な響き」で苦笑。
だって、邦楽器にジャズ(古くさいジャズ)をやらせたりするんだもの。なんで?
カデンツァは、なぜかジャズドラムと、和太鼓。前者は即興だったのかな?とにかく退屈なドラムソロ。後者も「だからどうした」という感じ。
いちばん盛り上がるところは、なぜかオケと邦楽器が一緒になって12小節のブルースをえんえんとやる。
とにかくちゃらんぽらん。
昭和30年代のコメディ映画のサウンドトラックみたいな感じで、そういうものだと思えば楽しめるけど、美的感動という点ではさっぱりでした。
せっかくすばらしい邦楽器奏者が集まっても、これではもったいないと思いました。*2
黛敏郎の「弦楽のためのエッセイ」は、小品であっという間に終わってしまった。
というわけで、最後の松村禎三「交響曲一番」(1965)に期待するしかない。
しかしこれがすごかった。打ちのめされました。
ぼくはこの曲、むかしサントリーの「作曲家の個展」で聴いてるはずなんです。
ところが、そのときの印象はまるでない。
(そのときの演奏は都響&尾高忠明だったらしい)
CDではよく聴いてます。とくに最近出た、湯浅卓雄&アイルランド国立響の演奏は優秀だと思う。
ですが、この日の下野竜也&日本フィルの演奏は、それをも吹き飛ばすような圧倒的なものでした。
まるで別の曲。
この曲、決して聴きやすい曲ではありません。
厳しい響き。しかもぐじゃぐじゃ。
地の底からマグマが沸きあがるさまを音にしたらこんな感じになるんじゃないか知らん?
下野竜也は、この複雑な曲を、すっきり明晰にまとめて、しかも最大限のエネルギーでもって放出してみせました。
下野竜也の指揮があたかも、荒れ狂う音塊を自在に操る、魔法使いか猛獣使いのように見えました。
はっきりしたメロディもテンポもない音楽が、これほど美しく響くものなのか。
思わず目を見張りました。
最後まで緊張感を途切れさせずに完走。おみごと。
かつて聴いた下野竜也&読響による黛の「涅槃交響曲」にならぶ名演だと思いました。
松村禎三のシンフォニーも、「涅槃」とならんで、日本人がつくった交響曲の頂点に位置する作品のひとつという気がしました。
やっぱり下野竜也はすごい。ほんとうにすごい。
そして日フィルもすごい。エライ。
日本フィルは経営が苦しいそうなんですが、こんなプログラムをやってくれるなんて泣ける。
みんなで日フィルを応援しよう!
先入観なしで、日本人が作った曲を聴いてみましょう。そこには新鮮な驚きと、大きな美的感動が眠っています。
これを聴かないで、西洋人の「クラシック音楽」ばかり聴いているのは、あまりにもったいない。
でも、こんな曲を聴いていても、ぜったい女の子にはもてません!