「愛のコリーダ」のテーマ曲に酔う
邦楽演奏家 BEST TAKE 吉村七重(1997)VZCG-139
曲目
- 筝譚詩集 第二集<春> 二十絃筝のために
- 1. I.芽生え
- 2. II.やよい
- 3. III.ひばり
- 4. IV.里曲
- 5. per-V.華やぎへの序
- 6. V.華やぎ
- 筝双重
- 7. 1
- 8. 2
- 9. 3
- 筝譚詩集 第三集<夏> 二十絃筝のために
日本初のハードコア映画だったのだ
大島渚の「愛のコリーダ L'EMPIRE DES SENS」
(フランス/1976)を見ていて、
音楽のよさに気がついた人はいませんか。
みんな、藤竜也の毛穴から精液が吹き出しそうなエロい顔や、
阿部定役・松田英子の淫猥そのものの肉体に
目が釘付けだったのではありませんか。
もちろんぼくもそうだったのですが、
メランコリックな筝(琴)の音色が妙に印象的で、
これは誰の曲だろうと気になっていたわけです。
エンディングで大島渚自身の気の抜けたような
ナレーションのあとに流れるクレジットによると、
「音楽 三木稔」とあります。
サントラCDがあるのかどうかわかりませんが、
あえて買う必要はありません。
あのテーマ曲はこのCDに収められています。
トラック1の「芽生え」がそれです。
作曲者・三木稔自身が開発した楽器
“二十弦筝”による独奏曲集の中の一曲です。
お琴なんて聴かない人にもおすすめ!
筝(琴)といえば宮城道雄、
宮城道雄といえば「春の海」、
「春の海」といえば伊東四郎が
「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」(TBS系)の中で
「ツンツクツクツクツン……ヒヤー♪」
とやっていたギャグをみんな思い出すのではないでしょうか。
そうでなくても、筝というとお正月のテレビか、
日本料理店でお約束みたいに流れているのを耳にするくらいで、
CDで筝の曲を買って聴くなんていうことは、
日本人の99.99%には想像すらできないことでしょう。
この曲は、そういう、
伝統邦楽に無関心な人たちにこそ聴いてもらいたいものです。
聴けばわかる至極のメロディ!
ごたくを並べないで、ともかくCDを掛けてみましょう。
おお……なんと美しいメロディなのでしょうか。
冒頭からあまりに美しいので、誰でも一瞬で理解できます。
おそらく、筝という楽器に対するイメージが一変するはずです。
「芽生え」は、この曲に惹かれて二十弦筝を
始める人が後を絶たないという、名曲中の名曲です。
このCDにはほかにも、
「華やぎ」という佳品が収められていますから、
買って損はないでしょう。
ちなみに「芽生え」を聴くだけなら、
このほかにもいくつか録音がありますから、
探してみてもいいでしょう。
演奏者・作曲家について
演奏の吉村七重は、野坂恵子と並ぶ、
この楽器の第一人者。
作曲の三木稔(1930〜)は、徳島出身で、
伊福部昭に師事した名匠。
尺八や筝といった伝統楽器を扱わせたら、
この人の右に出る人はいません。
東儀秀樹なんて聴いてないでコレを聴け!
邦楽ブームとか言われてますが、
この名曲が聴かれないで、なんのブームぞ。
筆者は「愛のコリーダ」と並んで、
この名曲をぐいぐい推します。
ただ、やらしい映画に使われたからといっても、
これを聴いていても、女の子にはぜったいにもてません。
(この文章は、以下のURLで2003年8月9日に掲載されたものです)
http://putchees.m78.com/reviewbykeiichi.html