「愛のコリーダ」のテーマ曲に酔う

putchees2004-12-08


邦楽演奏家 BEST TAKE 吉村七重(1997)VZCG-139

曲目

  • 筝譚詩集 第二集<春> 二十絃筝のために
    • 1. I.芽生え
    • 2. II.やよい
    • 3. III.ひばり
    • 4. IV.里曲
    • 5. per-V.華やぎへの序
    • 6. V.華やぎ
  • 筝双重
    • 7. 1
    • 8. 2
    • 9. 3
  • 筝譚詩集 第三集<夏> 二十絃筝のために
    • 10. I.露一つ
    • 11. II.南へ
    • 12. III.サヌール舞姫
    • 13. IV.白い風の下で
    • 14. V.雨ざんざん

作曲:三木稔
演奏:吉村七恵ほか(二十弦筝)
(曲目データは三木稔ホームページより引用)

日本初のハードコア映画だったのだ


大島渚の「愛のコリーダ L'EMPIRE DES SENS」
(フランス/1976)を見ていて、
音楽のよさに気がついた人はいませんか。


みんな、藤竜也の毛穴から精液が吹き出しそうなエロい顔や、
阿部定役・松田英子の淫猥そのものの肉体に
目が釘付けだったのではありませんか。


もちろんぼくもそうだったのですが、
メランコリックな筝(琴)の音色が妙に印象的で、
これは誰の曲だろうと気になっていたわけです。


エンディングで大島渚自身の気の抜けたような
ナレーションのあとに流れるクレジットによると、
「音楽 三木稔」とあります。


サントラCDがあるのかどうかわかりませんが、
あえて買う必要はありません。


あのテーマ曲はこのCDに収められています。
トラック1の「芽生え」がそれです。
作曲者・三木稔自身が開発した楽器
“二十弦筝”による独奏曲集の中の一曲です。

お琴なんて聴かない人にもおすすめ!


筝(琴)といえば宮城道雄、


宮城道雄といえば「春の海」、


「春の海」といえば伊東四郎
「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」(TBS系)の中で
「ツンツクツクツクツン……ヒヤー♪」
とやっていたギャグをみんな思い出すのではないでしょうか。


そうでなくても、筝というとお正月のテレビか、
日本料理店でお約束みたいに流れているのを耳にするくらいで、
CDで筝の曲を買って聴くなんていうことは、
日本人の99.99%には想像すらできないことでしょう。


この曲は、そういう、
伝統邦楽に無関心な人たちにこそ聴いてもらいたいものです。

聴けばわかる至極のメロディ!


ごたくを並べないで、ともかくCDを掛けてみましょう。


おお……なんと美しいメロディなのでしょうか。
冒頭からあまりに美しいので、誰でも一瞬で理解できます。


おそらく、筝という楽器に対するイメージが一変するはずです。


「芽生え」は、この曲に惹かれて二十弦筝を
始める人が後を絶たないという、名曲中の名曲です。


このCDにはほかにも、
「華やぎ」という佳品が収められていますから、
買って損はないでしょう。


ちなみに「芽生え」を聴くだけなら、
このほかにもいくつか録音がありますから、
探してみてもいいでしょう。

演奏者・作曲家について


演奏の吉村七重は、野坂恵子と並ぶ、
この楽器の第一人者。


作曲の三木稔(1930〜)は、徳島出身で、
伊福部昭に師事した名匠。
尺八や筝といった伝統楽器を扱わせたら、
この人の右に出る人はいません。

東儀秀樹なんて聴いてないでコレを聴け!


邦楽ブームとか言われてますが、
この名曲が聴かれないで、なんのブームぞ。
筆者は「愛のコリーダ」と並んで、
この名曲をぐいぐい推します。


ただ、やらしい映画に使われたからといっても、
これを聴いていても、女の子にはぜったいにもてません。


(この文章は、以下のURLで2003年8月9日に掲載されたものです)
http://putchees.m78.com/reviewbykeiichi.html