音楽における民族主義を支持する!

putchees2005-01-21

今回のCD

外山雄三:オーケストラ作品集2
(日本・フォンテック FOCD-3480)

曲目

交響曲第1番「帰国」
チェロ協奏曲
新川和江の詩による歌曲集
交響曲第2番


指揮:外山雄三
演奏:東京都交響楽団

クラシックファンには評判悪いです


外山雄三の「オーケストラ作品集2」を聴いてます。


名古屋フィルほか、日本の地方オーケストラを
たくさん指揮したことで知られるこの人、
実は芸大卒の作曲家でもあります。


日本的なメロディを臆することなく書く彼は、
日本の保守的なクラシックファンにはたいへん評判が悪いのですが、
にぎやかでバイタリティのある曲を書く人です。


とくに、彼の書いた「管弦楽のためのラプソディ」は、
日本の民謡や童謡のメロディを自在につなぎ合わせて、
たいへん昂揚するオーケストラ音楽に仕上げてあります。


この曲を聴くと、クラシック好きの人は鼻で笑うのですが、
ぼくはいたく感動してしまうのです。


よく知っている「八木節」や「炭坑節」のメロディが、
こんなに美しいなんて……!


と、思わず涙ぐんでしまいます。
いつか演奏のあとで「ブラボー!」と言ってやろうと思ってます。


この曲、欧州では聴衆が大いに盛り上がるそうです。


ちなみに、前に触れた和田薫なんかは、
明らかに外山雄三の影響を受けてます。

野蛮なリズムの祭典を聴け!


で、このCDですが、冒頭の交響曲一番「帰国」がすばらしい。


こんなやかましいオーケストラ曲が日本にあったのか!
思わず小躍りしてしまいます。


管弦楽のためのラプソディ」を上回る昂揚感。


太鼓のリズムの嵐・嵐・嵐!


土俗的ではあるのですが、このリズムは、どこかメカニカルで、
モダンな雰囲気です。


ブエルタスとかよりは、バルトークプロコフィエフに近い雰囲気。


作曲家はおそらくは、土俗的な祭りのリズムと、
現代的で都会的な感覚を、この曲で結合しようとしているのです。


大傑作とは言えないけど、なかなかの佳曲ではないでしょうか。
かましいオーケストラ曲が聴きたい人には絶対にオススメです。

自分らしい作品を作ろうよ


この曲を聴いて強烈に感ずるのは、「自分らしさ」を活かした表現が、
人に感動を与えるのだということです。


外山雄三はわたしたちと同じ日本人であり、
日本人らしい音感と美観によって表現しようとしています。


そうした創作態度を「かっこわるい」といって、
多くの日本人はなぜ排除しようとするのでしょう。


西洋ふうのスタイルを借りて、なぜよしとするのでしょう。


自分らしさを捨てて表現をして、いいものができるはずがありません。


自分の心の奥深くに分け入ったとき、わたしたちが出会うのは、
あまりにも「日本人」である自分自身の姿に違いありません。


なぜ、そこから目をそらそうとするのでしょう。
真正面から向き合って、ものを作ってください。


民族主義で、いいじゃないですか。


日本人は、日本人らしく。
中国人は、中国人らしく。
アメリカ人は、アメリカ人らしく。


それで誰も、不幸にはなりません。
民族主義ではなく、排他性と不寛容が人を不幸にするのです)


わたしは音楽における民族主義を断固支持します。

追悼:新宿ヴァージンメガストア


ところでこのCD、今はなき新宿ヴァージンメガストアVirgin Megastore3階のクラシックフロアで、
手書きのPOPで「最高!」って書いてあったんですよね。


あのお店の現代音楽担当者は、よほどの日本作曲家好きらしく、
力の入ったPOPがたくさんあって、読み応えがありました。


外山雄三を推しているのは自分だけではないと、
心強い思いです。


コレを読んでいるあなたも、ぜひ一度、
外山雄三のオーケストラ曲を聴いてみることをおすすめします。


もちろん女の子にはぜんぜんもてませんが、
血湧き肉踊る昂奮は保証します。


ただ、頭の固いクラシックファンは聴かない方がいいでしょう。


むしろ、わたしのようにふだんジャズとか聴いてる門外漢が聴いてこそ、
虚心坦懐に楽しめるのではないでしょうか。