日本ジャズ界の至宝、ピアニスト板橋文夫の名盤復活!!

putchees2005-01-27

今回のCD

わたらせ/渡良瀬WATARASE
板橋文夫ソロ(コロムビア1982)COCB-53311

曲目

  • いつか王子様がSomeday My Prince Will Come
  • ムサンドゥーサMsunduza
  • 言いだしかねてI Can't Get Started
  • 利根Tone
  • 渡良瀬Watarase
  • ミス・キャンMiss Cann
  • グッドバイGood Bye

爆音ピアニストの叙情派ソロピア


ジャズピアニスト板橋文夫の、1982年の作品
「渡良瀬WATARASE」がCDで復刻されました。


日本人ジャズの名盤というと必ず挙げられるこの作品が、
ようやく聴けるようになったのです。


ぼくは、初めてアマゾンamazon.co.jpを使って予約してしまいました。


本日(26日)が発売日です。さっそく聴いてみました。
期待を裏切らない素晴らしい内容です。

これを聴かずに死ねるか!!


このアルバムはソロピアノ集です。


A面は「いつか王子様が」を含むスタンダード、
B面が板橋文夫のオリジナル曲です。


いうまでもなく、聴くべきはオリジナル曲のほうです。


なんとまろやかでやさしい音楽でしょう。


芯があって、凛として、しなやかで、とてもなつかしい音です。
聴いていると、ふるさとの風景や人々が浮かんでくる気がします。


頭でっかちではなく、大地に根付いた音楽です。
血が通った本物の音です。


都会的な洗練は、ここにはありません。
しかし、人間的なやさしさとあたたかさに満ちています。


タイトル曲の「渡良瀬」とは、板橋文夫の故郷(栃木)を流れる川の名前。
まさに川の流れを思わせる雄大な曲です。
大地を潤す水の流れと、そこに息づく人の暮らしが、目に浮かぶようです。


そして最後の曲「GOOD BYE」の哀切なメロディは、涙を誘わずにいません。


全編にわたって、日本的なメロディとリリシズムの美に満ちています。


日本人がジャズをやるというのは、こういうことをいうのです。

自分の心の底にある「歌」を歌え!


ジャズというのは即興なのですから、すべてのプレイヤーは、
自分の中にある素材をもとに音楽を作るほかありません。


頭を空っぽにして演奏するとき、ジャズプレイヤーは、
自分が何者であるかを知るのです。


お勉強で覚えたコードやスケールやコピーフレーズからは、
本物の音楽は生まれてきません。
それををすべて忘れ去ったときに頭に浮かんだフレーズこそ、
その人の真の音楽だと思うのです。


それがどんなに稚拙でも、たどたどしくてもいいのです。
その人の心の「歌」なのですから。
それこそが、他人を感動させる音楽なのです。


日本人の感性で、即興をやればいいじゃないですか。
日々ぼくたちが踏みしめる大地から吸い上げたエモーションを、
サウンドにすればよいではないですか。


頭を空っぽにして、即興するとき、日本的なメロディが溢れてくるのを、
とどめる必要などないのです。


板橋文夫の音楽は、そういういちばん大切なことをぼくたちに教えてくれます。


西洋的な作法や洗練を身につけることが
よいミュージシャンになることだと信じているすべてのおばかさんたちに、
このアルバムを聴いてもらいたいものです。


ジャズを超えたスケールの名作名盤です。


こんな音楽は女の子にはぜったいにもてませんが、これを聴かずに…死ねるか!