これぞジャズ!西荻窪で板橋文夫を聴く!

putchees2005-02-04


今回はライブ報告です


板橋文夫(p)セッション
トリオ 立花泰彦(b)本田珠也(ds)


日時:2月3日(木)20:00〜23:00
場所:西荻窪 アケタの店

今夜はオーソドックスなジャズでした


名盤「渡良瀬」が復刻されたばかりのピアニスト*1
板橋文夫のライブに出かけてきました。


場所は西荻窪アケタの店」。
ピアニスト/オカリナ奏者・明田川荘之がオーナーを勤める小さなライブハウスです。


ぼくはこの店に、およそ10年ぶりに出かけてきました。
なんか、入口の様子が変わったような…記憶違いかな。


さて、今夜のお客さんは全部で16人。女性が10人、男性がぼくを含めて6人でした。


なんと、女性のほうがおよそ倍も多いではないですか。


「女にもてない」ことを紹介する条件にしている当レビューの根幹を揺るがす事態です。


とはいっても、みんなデートじゃなくて、
真剣に音楽を聴きに来ている人たちでした。


こうでなくちゃいけません。


女性の聴衆が多いというのは、板橋文夫のピアノが、
一見荒々しいようで、実はとても優しく、温かで、
人間味にあふれているからではないでしょうか。

血沸き肉躍るこのサウンド


きょうの演奏は、かなりフツウのジャズでした。


もちろん、スタンダードを演奏していても、
あの爆発的なテンションは健在です。


ただ、これまで2回聴いた経験よりは、
やや控えめかなという印象でした。


音数の多いベースのソロが続くと、
ちょっと眠くなってしまいました。


しかし、板橋文夫が踊るようにピアノをガンガン叩きはじめると
居眠りなどしていられません。


血が騒ぐとはこのことです。
ステージの最後は、サンバのリズムで、ミュージシャンも聴衆も昇天です。


ジャズって不思議な音楽です。


簡素なドラムセットと、ウッドベースと、ピアノ一台で、
これだけ聴衆を熱狂させてしまうのですから。


ロックでもクラシックでも、
ミュージシャンはステージで燃え上がるものでしょう。


ただ、奇跡に立ち会うことができる可能性は、
ジャズのほうがはるかに高いのではないでしょうか。


即興演奏には、魔物が潜んでいます。
始まってみなければ、どうなるかわからないのですから。


だからジャズは面白いのです。

共感が広がっていくあたたかな音


板橋文夫は、決してテクニシャンではありません*2
華麗でも、流麗でもありません。


ただ、音の力は、凡百のピアニストをはるかに凌駕しています。


オーネット・コールマンOrnette Colemanの稿で書いたように、
ジャズというのは、音色(サウンド)がすべてです。


板橋文夫のピアノも、他のピアニストと間違えようのない個性的なものです。


ふと思ったのですが、彼のピアノのサウンドは、
外側へ広がっていく力を持っているような気がします。


彼の音楽を聴いた人同士がつながっていけるような、
共感と温かみに満ちた音なのです。


内省的で、外側の世界と隔絶した印象を与えるサウンド……
たとえば、ポール・ブレイPaul Bleyのピアノなどと比べると、まったく対照的です。


あっけらかんとして、陽性で、飾らないサウンド
聴衆に一体感が広がるような音楽です。
それこそが、板橋文夫の音が持つ、真の力なのかも知れません。
彼の比類なきサウンドは、日本ジャズ界の宝です。


彼の音を、こうして気軽に聴きに行けることを、感謝すべきなのです。


ぜひみなさんも、いちどライブで彼のあたたかい音を聴いてください。
精力的にライブを行っている彼は、日本全国で聴くことができるはずですから。


ただ、こんなジャズを聴いていても、女の子にはぜったいにもてません。

*1:「渡良瀬」のセールスは好調なようです。みんな買いましょう!絶っ対に損はしません!

*2:もちろんうまいけど、テクニックをひけらかすタイプのピアニストではありません