不破大輔の最強バンド、フェダインを聴け!

putchees2005-02-07


今回のCD

ライブ!LIVE!
フェダインFEDAYIEN
(日本・地底レコード)

曲目

1.海 UMI
2. DAVA DAVA DAVA
3. CAPPLYSO
4. フワルンバ FUWARUMBA

ミュージシャンMusicians

フェダイン
川下直弘 sopranosax,tenorsax,violin
不破大輔 bass
大沼志朗 drums


【ゲスト】
北陽一郎 trumpet
泉邦宏 alto sax
花島直樹 bass clarinet
カズ中原 guiter
遠藤公義 BUTOH
星野建一郎 BUTOH


1996年メールス(ドイツ)ジャズフェスティバルにおけるライブ録音
Live at Moers Jazz Festival '96 Germany on May 26.

誰もがぶっ飛ぶ強力サウンド


渋さ知らズのダンドリスト(バンマス?リーダー?指揮者?)として知られる
不破大輔は、すぐれたサウンドクリエイター*1であると同時に、
たいへんすぐれたベーシストでもあります。


惜しくも2000年に解散したバンド・フェダインでは、
彼の強力なベースを耳にすることができました。


ぼくが彼らを初めて聴いたのは1993年でしたが、
その圧倒的なパワーに腰が抜けそうになりました。


90年代には都内を中心に、「渋さ」と平行して活動が続けられていましたから、
当時は気軽に聴きに行くことができました。


いま聴くことができないのは、残念至極です。

日本ジャズ界最強の3人組!


フェダインは、ベースの不破大輔
ドラムの大沼志朗、そしてテナーサックスの川下直広のトリオです。


ロックでいえば、スリーピースですね。
3人でバンドをやるような気概のあるミュージシャンは、
クリームCreamやジミヘンJimi Hendrix Experienceを挙げるまでもなく、腕におぼえのある人です。


さて、このフェダインの3人、


川下直広は、テナーサックスのほかに、ソプラノサックスと、
エレキヴァイオリン、そして笛(トロンボーンみたいにスライドさせて音程を変えるオモチャ)を使います。


彼はときには、テナーとソプラノを同時にくわえてハモらせます*2
まるでローランド・カークRoland Kirk*3


大沼志朗は、かつての渋さのステージでもおなじみのように、
猛烈なビートを繰り出すスゴ腕ドラマー。
鋭利なカミソリを思わせる強靱なサウンドです。


そして不破大輔。彼の生み出すグルーヴは、
粘りとコシがあって、ねっとりとからみつく濃厚なもの。
6/8拍子のリフも、4ビートのウォーキングベースも、
ズンドコズンドコ、重厚でかっこいいです。


こんな超人トリオの作り出す音楽が、つまらないはずがありません。

メールスを沸かせたこの爆演を聴け!


このCDでも、ドイツの聴衆を熱狂の渦に巻き込んでいます。
もう疾風怒濤、シュトルム・ウント・ドランクですよ*4


ライブ盤ということもあって、録音はイマイチですが、
それを補って有り余る熱狂に満ちています。
ゲストも参加して、「渋さ」的なにぎやかさ。


やはりこういうバンドは、ライブを聴かなければ。


それにしても、この猛烈なスピード感はどうでしょう。
そして、ピタリと息のあったコンビネーションはどうでしょう。


基本はフリージャズですが、ロックやファンク、あるいはブルースのようなグルーヴ感に満ちています*5


50年代のソニー・ロリンズトリオSonny Rollinsから60年代のオーネット・コールマントリオOrnette Coleman、70年代のザ・トリオ(ジョン・サーマンJohn Surman)など、ジャズ界にあらわれた数々のサックストリオの進化したカタチが、ここにあるようです。
ジャズも時代とともに進化するのです。


川下直広のサックスは、過剰なビブラート*6を駆使しつつ、
猛スピードで突っ走ります。


大沼志朗のドラムは、人間業とは思えないテンポで
背後から追いすがります。


そんなふたりを、不破大輔のベースががっちりつかまえて離しません。


フェダインここにあり。
ドイツ人もビックリです。

渋さ知らズファンなら必聴!


こんな強力バンドが存在していたということを、
知らないでいるのはあまりにもったいないことです。
ぜひ彼らの演奏を一度聴いてみてください。


もちろん、渋さ知らズのファンなら必聴。
渋さとは違う不破大輔の一面に触れることができます。


フェダインのCDは何枚か出ていますが、いまは店頭でもあまり見かけません。
見つけたら即ゲットです。


不破大輔は、いまでも渋さチビズほかでベースを弾いていますが、
チビズでの演奏ではあくまでサポートに徹している印象で、
フェダインでの演奏ほど、前面に出ることはありません。


ベーシストとしての真価は、フェダインのようなバンドでこそ
あらわれているのではないでしょうか。


渋さ知らズのファンに限らず、音楽好きなら、
彼のベースをいちどは聴くべきだと思いますよ。


もちろん、こんな音楽は女の子にはぜったいにもてませんからあしからず。

*1:独自の音色=サウンドを作る人、という意味で使っています。カッコつけてこんな言葉を使っているわけじゃありません。

*2:本人は、「そんなにムツカシクない」と言ってました。

*3:ローランド・カークは、多いときには同時に4つの管楽器を同時に鳴らしていたそうです。レコードじゃわかんないけど。

*4:ドイツのメールスジャズフェスは、70年代の山下洋輔から近年ののなか悟空まで、日本のフリージャズ系ミュージシャンの、欧州への紹介の場であり続けてきました。いまは渋さが半レギュラー的に出演しています。

*5:ぼくの知り合いは、「あれってヘビメタみたいなもんでしょ?」と表現していました。

*6:本人がいうには、演歌のコブシみたいなものだそうです。