男ひとりの冬の夜に沁みるBGM、古楽をどうぞ。

putchees2005-02-22


たまにはBGMでも


「どうしてこんなにモテるんだろ♪」
というのは、クレイジーキャッツの名曲ですが、
わがレビューはまったくモテない名曲ばかりを紹介していきます。


たてつづけにヘビーな曲ばかり紹介しているので、
たまには、BGMになりそうな軽い曲を紹介しましょう。


といっても、もちろん女の子にはもてない音楽です。
無印良品の店内BGMみたいなのを期待しないでください。


ヨーロッパの古楽なんてどうでしょうか。
男ひとりの、サビシイ夜(しかも冬)のBGMに最適です。

今回のCD

リュートのためのソナタ集 第1集Sonatas for Lute Volume 1」
S.L.ヴァイスS.L.Weiss(1686-1750)
ナクソスNaxos8.553773)
http://www.naxos.co.jp/title.asp?sno=8.553773&cod=27

曲目

ソナタ第36番ニ短調
ソナタ第49番変ロ長調
ソナタ第42番イ短調

ミュージシャン

ロバート・バートRobert Barto(バロックリュートbaroque lute)

渋い!渋すぎる!


今回紹介するCDは、S.L.ヴァイスSylvius Leopold Weissという作曲家の
独奏リュートのためのソナタ集です。
だいたい、300年くらい前の曲が収められています。


リュートというのはアラブ由来の古ーい撥弦楽器*1で、
洋梨を割ったような形をしています。


といっても、ほとんどの人は、見たことも聴いたこともないですよね。
バロックより前の時代に、ヨーロッパで好まれた楽器です。
18世紀には、弦が13コースあって、指で弾いていたそうです。


一時は隆盛を極めたリュートという楽器、音量が小さいとか、
演奏が困難とか、さまざまな理由で廃れていきました。
基本的には過去の歴史に属する楽器です。


しかし、いまでもバロックリュートの奏者はいます。
これがなんともいい味わい。
くすんだギターのような、渋〜い音がします。


ヴァイスは、バッハJ.S.Bachとほぼ同じ時代を生きた
作曲家*2で、独奏リュートのためのソナタを40曲以上作ってます(スゴイ!)。


このソナタが、たいへんすばらしいのです。
バッハの残したいくつかのリュート曲に勝るとも劣らない名曲揃いです。


リュートのための曲をギターで演奏することも多いのですが、
これはぜひ、オリジナルのリュートでの演奏を聴きたいところです。


泣く子も黙る世界最大の廉価版CDレーベル、ナクソスが、
ヴァイスのリュート曲集を出しています。
2005年1月現在、第5集まで出ていますが、どれもこれも充実した内容です。


次回のリリースが楽しみなシリーズのひとつです。


ぽつぽつと弦をはじく音が、さびしい冬の深夜の気分によく合います。
心に沁み入る、最良のBGMといえるのではないでしょうか。


よいBGMの条件としては、音量がいきなり大きくなったりしないことと、
耳障りな音色でないことが大切なのですが、
独奏リュートは、そのどちらも満たしています*3


ヴァイスの曲は、ときに孤独にときに優しく、
心地よいくつろぎを与えてくれます。


はっきりいって地味だし、
決して大向こうに受けるものではありませんが、
なんともぜいたくな音楽ではありませんか。


たまにはこういう上質のBGMも悪くないですよ。
なんといっても一枚1000円足らずですから、いちど試してみてはどうでしょうか。
シリーズのうち、どれから買っても、まったく差し支えありませんので。


もちろん、こんなCDを聴いていても、女の子にはもてませんが。

*1:弦をはじく楽器

*2:バッハと1歳違い

*3:ピアノ曲だと、そうはいきません。19世紀以降のピアノ曲は、音量の変化が激しすぎてBGMには向きませんし、それ以前のチェンバロ曲は、キンキンという独特の音色がときに耳障りだったりします。