ハチャトリアンの交響曲3番でおっ立てろ!
「剣の舞」といえばこの人
【今回のCD】
「ハチャトゥリアン:交響曲全集、協奏曲集、仮面舞踏会」
(露・ヴェネツィアCDVE04265)
ロシアの作曲家・ハチャトゥリアン
Khachaturian(1903-78)といえば、
なんつっても「剣の舞」だ。*1
血湧き肉躍る音楽とはこのこと。
昭和の貧しい子供たちは、みんな「剣の舞」で徒競走して、
カバレフスキーの「ギャロップ」で障害物競走したもんだ。
さて、日本が昭和のころ、ロシアはソ連って国だった。
ソ連はいまの北朝鮮みたいなトンデモ国家で、
独裁者が平気で国民を何百万も殺したりするようなとこだった。
なにしろ、1941年にナチが攻め込んできたとき、
ソ連軍には、まともに指揮のできる将校がいなかったって話だ。
なんでかっていうと、独裁者が自軍の将校をみんな殺してたからだ。
そんな笑えないお笑い国家、ソ連の
独裁者といえばスターリンだ。
世界の独裁者ナンバーワンを決めるなら、
ヒトラーとスターリンは同率首位かもしれない。
そんなスターリンの支配するソ連は、
マッチョな男性原理の支配する国だった。
もちろん社会主義という建前だから、
あちこちで女性も活躍しただろうけど、
独裁者を頂点とするピラミッド型国家というもの自体が、
やっぱり男性的、オスザル的な男根的社会だと言わざるを得ない。
あの広大なソ連で
権力(男根)をふるうことができるのは、
スターリンという男ただひとりだったのだ。
ソ連のほかの男たちは、
まるで去勢された宦官のようにフニャけているしかなかったってわけ。
ショスタコーヴィチの半立ち音楽
さて、音楽の話に戻る。
ソ連にショスタコーヴィチShostakovichって作曲家がいた。
この人の音楽は、とくに交響曲は、実に勇ましい。
交響曲5番とか、いかにもマッチョで男性的。
ところが、ギンギンにおっ立つという感じはなくて、
かんじんのところでフニャけてしまう。
要するに半立ちの音楽なのだ。
それはなぜかと考えるに、
やっぱり、思い当たるのはソ連という国のことだ。
ソ連では、男根をスターリンが独占しているから、
ほかの男は勃起することが許されないのだ。
もし、ギンギンに立っているのを見つかったら、
たちまちスターリンに嫉妬され、殺されてしまうのだ。
だから、ショスタコーヴィチの音楽は、
コーフンしても途中でなんだかわからない感じになって、
中途半端に萎えてしまうのだろう。
掟破りの「全立ち音楽」
ところで、ハチャトゥリアンのことだ。
この人の音楽は、半立ちじゃない。
全立ち。ビンビンなのだ。
今回のCD、コンドラシン指揮モスクワフィルの
交響曲3番「シンフォニー・ポエム」を聴いてみよう。
金管が吼える。
オルガンが泣きわめく。
弦が悲鳴を上げる。
耳をつんざく狂乱のうたげ。
なんたって、トランペットだけで15本だ。
イカレてる。
これこそマッチョ。男性原理100%の音楽だ。
さんざ暴れまくったあげく、
ビンビンに勃起した男根が射精して果てる。
まあそんな感じだ。
こんな曲を作って、ハチャトゥリアンは
殺されなかったのだろうか?
なにしろ、スターリンをさし置いて、
自分がおっ立って気持ちよくなっちゃう音楽なのだ。
けしからん、と言われても仕方がない。
ハチャトゥリアンは、
この曲をロシア革命30周年のために作ったらしい。*3
つまり、表向きはレーニンおよびスターリンのために、
という音楽なのだろう。
ビンビンに立つのは、あくまで
レーニンやスターリンさま、という建前なのだ。
だからハチャトゥリアンは生き延びることができたのかもしれない。
でも、実際におっ立てて気持ちよくなってるのは、
明らかにハチャトゥリアン本人。
こんなにやりたい放題の曲を書いて
ソ連で天寿をまっとうした作曲家なんて、たぶんほかにいない。
トンデモ国家のトンデモ作曲家、ハチャトゥリアン。
「剣の舞」以上に血湧き肉躍る音楽、
「交響曲3番」を、ぜひ一度聴いてほしい。
でもって、これ聴いてビンビンにおっ立ててほしい。
ただしもちろん、こんな音楽を聴いていたら、
女の子にはぜったいにもてないからそのつもりで。