上野の奏楽堂で日本の名曲を聴く!

putchees2008-08-04


コンサート報告です


【今回のコンサート】
「埋もれていた作品たち 〜日本の交響作品撰集〜」


(2008年8月3日午後7時:旧東京音楽学校奏楽堂)



【曲目】
高田三郎:山形民謡によるバラード (1941)
大澤寿人:ピアノ協奏曲第3番 変イ長調 「神風」(1936)
橋本國彦:笛吹き女(深尾須磨子・作詞)(1928)
深井史郎 :組曲「大陸の歌」(1941/43)


【ミュージシャン】
ピアノ: 野平一郎
ソプラノ:増田のり子
指揮:本名徹次
管弦楽:オーケストラ・ニッポニカ

最良のコンサート


上野でオーケストラ・ニッポニカを聴いてきました。
日本の近代音楽にこだわりつづける
マチュアオーケストラです。


今回のコンサートは
いつにもましてすばらしかった。


ぼくたちはこういうものこそを
聴かなければなりません。


モーツァルトチャイコフスキーなんて聴いて
浮かれてる場合じゃないよ。


感動が冷めないうちにご紹介しましょう。

蝉時雨の静寂


コンサートの会場は上野公園にある、
東京音楽学校(藝大)奏楽堂


古くて美しい建物。
ホールは狭くて、残響があまりない。
オーケストラの生音が直接耳に届くってわけ。


背中のほうから、蝉時雨が聞こえてくる。


ああなるほど、明治以降の音楽家たちは
このようにしてクラシックを聴いてきたのだなと感慨深い。

大澤壽人のピアノ協奏曲


今回ぼくが面白かったのは、
なんといっても大澤壽人の「神風」。


大澤壽人については、過去のレビューで
ご紹介しています。


id:putchees:20050221
id:putchees:20060325


あの大傑作を、ようやく生で聴くことができた。


ピアノは野平一郎。
おそらくそうとうムツカシイ独奏部分を、
苦もなく弾いてくれました。
えらくカッコイイ。


本名徹次の指揮は、
高速でグイグイ進む感じ。


福島生まれなのに、
江戸っ子のようないさぎよさ。


両端楽章の激しい部分は、
ガンガン盛り上がる。
フィナーレも迫力十分。
こりゃ、ナクソスの録音より数段いいよ。
さすが、何度も演奏してるだけのことはある。


あの夢のような中間楽章は、
鳥肌ものの美しさ。
こりゃラヴェルのピアノ協奏曲(の中間楽章)に負けてないよ。


アルトサックスの存在感が想像以上に大きいね。
こりゃまさにジャズだよ!


いやあ、いいもの聴いた。


昭和3年の大傑作


次いでよかったのは、
橋本國彦の「笛吹き女」。
ソプラノに管弦楽の伴奏。


2005年のコンサートでも聴いた曲ですが、
今回のほうが深い感銘を受けました。


なんと気の利いた、端正な音楽か。


この曲を、橋本國彦は24歳で、
日本で学んだ技術だけで書いてる。


しかも、1928年(昭和3年)に。


これはちょっとすごいでしょう。


同時期のヨーロッパの作曲家の作品と比べても、
まったくひけを取らない完成度。


こんな曲があったことを知らないまま、
日本人は外国のクラシックなんて聴いていていいのか?

深井史郎と満洲


深井史郎の「大陸の歌」もよかった。
満洲を題材に作った、
大戦中の作品。


ドレミソラドの中国音階で、
ノーテンキな「大陸ふう」の音楽がつむがれる。
なんだか、戦前のアニメのサントラみたい。


これはちょっと…と思っていたら、最後がすごい。
やけくそみたいに盛り上がって、ドン!と終わる。


いやー、さすが深井史郎。
ただじゃ終わらないね。


高田三郎の曲もよかったよ。
民謡を素材にしてて、
ちょっとバルトーク
「ハンガリアン・スケッチ」とかに似てるなと思ったね。

自分の国の音楽を聴こう


一晩でこれだけの曲を聴けて、もう大満足。
いつもながら、オーケストラ・ニッポニカの志の高さに感動したね。


どうして、これだけすぐれた日本の近代音楽が
極度にマイナーなままなのだろう?


どうしてみんな、母国の大澤壽人や橋本國彦を聴かずに、
モーツァルトチャイコフスキーなんて聴いているんだろう?


モーツァルトとか聴いていると、
自分が黄色い肌の日本人だってことを
忘れられるとでも思っているんだろうか?


まったくどうかしているよ。


ニッポニカの演奏を聴けば、
黄色い肌の自分が誇らしいと感じられるのにね!


とにかく、ニッポニカの活動はすばらしい。
こういうのを文化っていうんだろう。


四の五のいわないで、
黙って彼らの演奏を聴くべし!
http://www.nipponica.jp/index.htm


ただもちろん、
こういうのを聴いていても、
女の子にはぜったいにもてないけどね。