井上ミッチーで日本狂詩曲を聴く

putchees2008-09-02


コンサート報告です


【今回のコンサート】
読売日本交響楽団第505回名曲シリーズ


2008年8月26日(火)サントリーホール(19:00-)
指揮:井上道義


【曲目】
伊福部昭:日本狂詩曲   
リスト:ハンガリー狂詩曲第2番  
エネスコ:ルーマニア狂詩曲第1番 
ディーリアス:ブリッグの定期市〜イギリス狂詩曲
ラヴェル:スペイン狂詩曲

日本の過激なラプソディ


読響のコンサートに行ってきました。
目当ては伊福部昭の日本狂詩曲。


なんと、各国作曲家のラプソディだけを集めたプログラム。
日本、ハンガリールーマニア、イギリス、
それにフランス(スペイン)ときたもんだ。


しかも、指揮は肉体派・井上道義
血湧き肉躍るコンサートに違いない。


わくわくして出かけましたよ。


会場はサントリーホール
客の入りは5割から6割ってところ。


平日だし、外国の大物指揮者じゃないから、
仕方ないか。


しかし、この日のプログラムを
スクロヴァチェフスキや
アルブレヒトが振ってもさまになるまい。


きょうの曲目は、
井上ミッチーだからこそ面白いのに。
東京のクラシックファンはわかってないぜ!


さあ始まった。


伊福部昭のデビュー作、「日本狂詩曲」(1935)だ。


この曲は、打楽器と管楽器が主役。


なんてったって、管楽器は3人ずつで、
打楽器奏者が9人だ。


管がブカブカ、打楽器がドシャメシャ


もうたまらない。


きょうの演奏は、それぞれの楽器が
ねっとりと日本らしいフレージングを強調していたね。


木管金管も、指揮者の意図をよく汲んでがんばったって感じ。


第2楽章の「祭り」では、
意図的にゆっくりしたテンポで、
力強さを強調していたよ。


井上ミッチーが、四股を踏むようにタクトを振る。
ズンドコ、ズンドコだ。


フィナーレでは、ちょっとタメを作って、
ジャカジャカジャン!と終わったね。


いやー、なかなかよかった。
テンポは、昔、都響沼尻竜典が振ったときと近い印象だけど、
今回のほうが感銘を受けました。


日本人が日本人の曲を屈託なく演奏する。
ミッチーはこの曲のことをわかってるね。


それにしても、この曲は破格だね。
だって、トゥッティになると、弦楽器がぜんぜん聞こえないんだもん。
舞台の後ろには打楽器奏者がずらりと並んでいるし、
ピアノやハープもいる。


1930年代の日本のオーケストラ曲としては
常識外れもいいところ。


やっぱり伊福部昭いかした野郎だぜ!


ルーマニアの舞踏に酔う


さて、2曲目のリストは、やや上品な感じ。
名曲だと思うけどね。


でもって、3曲目はエネスコ(エネスク)だ。
これがすごい。


ジプシー風のエキゾチックなリズムで、
ガンガン盛り上がる。


指揮者は、いまにも踊り出さんばかり。
いや、ほとんど踊ってる。


動作も表情も、なにもかも面白い。
井上ミッチーは全身エンターテイナーだ。


フィナーレまで一気に突進して、
晴れがましく終わる。


やあやあ、さても見事な。
…こんな面白い曲だったっけ?

すばらしいコンサート


後半はディーリアスとラヴェル
まずはイギリスのディーリアスだ。


いかにも「英国の田園」ふうののどかなメロディが
流れていく。


東欧や極東の野蛮な音楽とは違うぜ。


同じ「ラプソディ」でも、国によって
こんなに違うというのが面白い。


さて、最後はラヴェル


最初の1音からもうラヴェルだ。


上品にして過激。こんな音を作れるのは、
音楽史の中にこの人しかいないだろう。


この曲を最後に聴けば、定期会員の
お上品なマダムたちも怒って帰ることはないだろう。


バランスの取れたプログラムだと思ったね。


井上ミッチーはノリノリで、
またまた指揮台の上で踊りまくっていたよ。


ああ面白かった。


観客はホールの半分しかいなかったけど、
みんな満足そうだったよ。


実にいいコンサートでした。


井上道義らしさが十全に発揮されたプログラムと演奏でした。
こんなのをまた聴きたいよ。


今回の演奏会が満席になるようなら、
東京のクラシックファンもやるじゃん!って思うのにな。


でも一般には、
こんなコンサートに来ても、
女の子にはウケないし、もてないんだろうねぇ。