笙とアコーディオンはよく似ている
今回のアルバム
「DEEP SILENCE」
細川俊夫:線 V/雲景・月夜/光に満ちた息のように/雅楽(宮田まゆみ/フッソング)
HOSOKAWA, T.: Sen V / Cloudscapes - Moon Night / Wie ein Atmen im Lichte / Gagaku (Deep Silence) (Miyata, Hussong)
(独、Wergo 6801-2)
(ナクソスミュージックライブラリー)
http://ml.naxos.jp/album/WER6801-2
たまには細川俊夫も悪くない
このアルバムは面白い。
なんと雅楽の笙とアコーディオンのデュオ。
演奏は宮田まゆみとステファン・フッソング。
笙と宮田まゆみについては、以前えらい長々しく書いたので、そっちをご覧ください。
このアルバムは、ドイツの現代音楽専門(?)レーベル、Wergoが出してる細川俊夫作品集です。
彼はドイツで人気があるんだよね。
細川俊夫は、ちっとも好きじゃない。
彼のオーケストラ曲は眠くなる。
武満徹と同じで、せっかくオーケストラを使ってるのに、ちっともカタルシスがない。
I hate his music! と思っていたのですが、彼の室内楽を聴くようになって、イメージが変わってきました。
つまり静かで、BGMには悪くないわけです。
このアルバムは、静けさでいえばほぼ究極といえます。
70分間ほとんど全音符だけなんじゃない?
解説には禅とか間とか、いかにも欧州人がよろこびそうなタームが満載でした。
ようするに、幽玄とかわびさびの境地ってやつだよね。
細川俊夫は、日本文化のわびさび的価値(つまり静的な面)を体現した作曲家なんだ。
ま、理屈はともかく。
このアルバムには、雅楽の伝統曲(笙の独奏曲)と細川俊夫のオリジナル曲が交互に入ってる。
どっちもごくごく静かで、ほとんど動きがない。
アコーディオンと笙がソロだったり、デュオで演奏したりする。
アコーディオンは、オクターブ上げて、笙の音域(ピッコロより高い)に合わせているらしい。
笙もアコーディオンも、フリーリード楽器free reed instrumentsだよね。
だからうまく調和する。
アコーディオンで雅楽の和音やメロディを演奏するところなんて、かなり面白い。笙との微妙な音色の違いが音楽に味わいを加えている。
細川俊夫の曲は、現代音楽的ではあるけど、雅楽と並べても違和感のない響きになっている。ごく控えめ。
自意識過剰でもエキセントリックでもないところが好印象。
まさにユニークな響きです。
西洋には、こんな響きがあるわけがない。世界に誇れる音楽だと思います。
細川俊夫は、日本の伝統を踏まえることで、ほかにない響きを作り出したといえるでしょう。
もちろん宮田まゆみとフッソングの演奏もいいです。
現代音楽好きも現代音楽嫌いにもおすすめできます。
日本人が1000年以上受け継いできた不思議な和音の響きに酔いしれてください。
ただもちろん、こんな音楽を聴いていたら、女の子にはもてないけどね。