ベンジャミン・ブリテンの37枚組ボックスセットを聴く

putchees2008-10-27


今回のCD


ベンジャミン・ブリテン/コレクターズ・エディション」
「Benjamin Britten Collector's Edition」
(EMI輸入盤:2175262)


20世紀英国の大作曲家


EMIの新譜、
ブリテン37枚組CDボックスを聴きましたよ。


作曲家・ベンジャミン・ブリテン(1913-76)は、
戦間期の英国に現れた早熟の天才で、
20世紀最大のオペラ作曲家で、反戦主義者で、ゲイだった。


日本人なら、ブリテンと聞いて思い浮かべるのは、
紀元二六〇〇年祝典のために作曲された彼の代表作
シンフォニア・ダ・レクイエム」(1940)だ。


歌舞伎座で初演されるはずだったのに、
委嘱した日本政府は、楽譜を受け取って演奏しなかったのだ。


たしかに、タイトルが
「レクイエム」じゃ、ちっともおめでたくない。


おかげで、この曲の初演者は、山田耕筰じゃなくて、
バルビローリになってしまった。


今回、このボックスセットで初めて聴いたけど、
音楽自体はブリテンらしい、厳しい響きのモダンな曲だ。


声楽が入るわけじゃないから、
タイトルを「レクイエム」としなければ、
日本政府もいやがらなかっただろう。


天孫日本平定の様子を描いた音楽だ、
なんてこじつけができたかもしれない。


最後のほうの澄明な響きなんて、
高天原の美しい光景を思わせなくもないよ。


ただ、ブリテンは、そんなこじつけは
したくもなかったんだろうね。


だから「レクイエム」なんて
身も蓋もないタイトルで日本に送っちゃった。
彼は職人じゃなくて、ゲージュツ家だったんだな。


その点は、同じく日本政府の委嘱を受けて、
日本にちなんだ曲を作った
リヒャルト・シュトラウスのほうが職人気質だな。


もっとも、このときの委嘱作で、
いちばんお祭りの雰囲気に合ってたのは、
イベールの名曲「祝典序曲」だろうね。


ちなみにブリテンは、作曲料はちゃっかり受け取ったらしい。

弦楽四重奏曲を聴け!


このボックスセットは、ブリテンの主要曲が大半入ってて、
異様に充実している。


惜しいのは、歌曲の「中国の歌」とか、
男しか出てこないオペラ「ビリー・バッド」とか、
能にインスパイアされたらしいオペラ
「カーリュー・リヴァー」が入ってないことかな。


個人的に面白かったのは室内楽で、
どれもハズレなし。


とりわけ弦楽四重奏曲は名曲ばかりだ。


クールでハードボイルド。
そして、ちょっぴりショスタコーヴィチ風味


これぞ男の音楽。
もてない室内楽って感じだ。


なかでも弦楽四重奏曲一番は最高。
最終楽章のカッコよさは、ぜったいに一度聴いてもらいたいね。
ビンビンくるよ。


この曲のことは、確かずっと前に書いたね*1
改めて面白いと思った次第。


こんなぜいたくなボックスセットが1万円ちょっと
買えるなんてすばらしい。


同じシリーズで、
エルガーヴォーン・ウィリアムズも出てるから、
そっちもオススメしたい。


イギリスは、もてないクラシックの宝庫
男なら聴いてみんしゃい!


ただもちろん、こんなのを聴いていても、
女の子にはぜったいにもてないんだな。

*1:id:putchees:20041209