箏の音を聞いてアイデンティティを確認する
吉村七重の箏は聴くべきである
【今回のCD】
吉村七重「The Art Of Koto Volume3 二十弦箏作品集」
(合衆国・Celestial Harmonies 13188-2)
【ミュージシャン】
吉村七重(二十弦箏)
三橋貴風(尺八)
日本人の音
ぼくは欧州のクラシックなんて聴いてるんですけど、
しょせん黄色い肌の日本人です。
東京や欧州のコンサートホールで
わかったような顔をして音楽を聴いていても、
どこか冷めたところがあります。
目の前で鳴っている音楽はすばらしいけれども、
自分のルーツとは所詮関係のないところで生まれたものだ。
そういう違和感を忘れてはいけないと思うんです。
ときどき、自分のアイデンティティに根ざした音を
聴く必要があると感じています。
そういうときは日本の楽器を聴くんです。
今回はこれ。
箏です。
吉村七重の二十弦箏作品集。
Naxos Music Libraryに入ってます。
http://ml.naxos.jp/album/13188-2
合衆国のレーベルから出てるやつ。
現代邦楽ですけど、
三木稔の「天如」「秋の曲」
それに長澤勝俊の「錦木に寄せて」
それに西村朗、佐藤聡明の作品が入ってます。
西村朗のやつは、例によって中東ふう。
佐藤聡明のやつもけっこうよかったです。
長澤勝俊の作品は名曲です。
現代的ではあるけど、素朴で、純粋な美しさに満ちている。
現代邦楽に不慣れな方には、まずこれをおすすめしたいと思います。
しかしなんといっても三木稔の二曲がすばらしい。
三木稔さんは先頃亡くなりました。哀悼の意を表します。
箏曲を現代の芸術へ高めようという野心に満ちた「天如」。
そして尺八と二十弦箏がたとえようのない美をつむぎだす「秋の曲」、
いずれも言うことのない名曲名演です。
とくに「秋の曲」は、音楽好きならだれもが聴くべき名曲だと信じています。
箏の音は、日本人ならば、
聴いた瞬間に「自分の音」と感じるのではないでしょうか。
西洋音楽、西洋楽器だってすばらしい。
ぼくらがそれを聴くことに葛藤を覚える必要はありません。
でも、たまには自分たちの音も聴いていいと思います。
自分たちはやっぱり日本人であるということを規定されているのですから。
もちろん、こういう地味な音楽を女の子にすすめても、
あまり喜ばれないですけどね。