ドン・チェリーのライブ最高だわ。

putchees2012-09-04


今回のアルバム

ドン・チェリー Live at Cafe Montmartre, Vol. 1
DON CHERRY : Live at Cafe Montmartre, Vol. 1 (1966)
(合衆国/ESP:ESP4032)


ナクソスミュージックライブラリー:http://ml.naxos.jp/album/ESP4032

「ゴールデンサークル」の名曲をやってる。


ナクソスミュージックライブラリー(NML)にESPレーベルが参加しました。
フリージャズの名盤がたくさん聴けるようになったよ。


さて、こんなアルバムを見つけたよ。


ドン・チェリーガトー・バルビエリが66年にコペンハーゲンのカフェ・モンマルトルで録ったライブ盤。


これすごくいい。


1曲目にやってるのは、なんとオーネット・コールマンの「ゴールデンサークル」(1965)に入ってる「Faces and places」のカバー。


かなり違った演奏だけど、たしかにあの名曲だ。


うーん、うれしいな♪


このライブ、とにかく熱い。いやむしろ暑苦しい。


全体にラフな演奏なんだけど、それがジャズらしい。


ドン・チェリーのちょっと雑なトランペットもいい。
ヴィブラフォンのカール・ベルガーKarl Bergerの硬質なソロもいい。ベースもドラムスも。
そしてなにより、ラテンジャズに転向する前のガトー・バルビエリのテナーサックスがすばらしい


全員すごくいい音色を持ってる。
これこれ、これがジャズですよ。


もちろんフリージャズに近いけど、温度的にはマイルスの「プラグド・ニッケル」あたりと同じくらい。(同時代だし)
あれが楽しめるならこのアルバムも楽しめるはず!(たぶん)


ぜひ一度試していただきたいです。


ただ、こんなん聴いてたら女の子にはぜったいもてないから!(断言)

松村禎三の交響曲一番に打ちのめされる

今回のコンサート


日本フィルハーモニー交響楽団第642回定期演奏会
2012年7月14日(土)14:00-16:00サントリーホール(赤坂)
(ミュージシャン)
指揮:下野竜也
管弦楽:日本フィル
(曲目)
戸田邦雄:合奏協奏曲「シ・ファ・ド」
山本直純和楽器管弦楽のためのカプリチオ
黛敏郎:弦楽のためのエッセイ
松村禎三交響曲一番

ツムラ!マツムラ!マツムラ


一年ぶりに日本フィルの定期演奏会に行ってきました。*1


下野竜也が日本人作曲家の作品だけを振るという。


行かないわけにはいかないじゃないですか。


地味なプログラムだけど、お客さんはたぶん半分以上入ってました。


この日の曲は、すべて日本フィルの委嘱作品。


山本直純の曲は、邦楽器群とオーケストラが一緒になって演奏するってやつ。
楽しみにしてたんですが、あまりに「昭和な響き」で苦笑。
だって、邦楽器にジャズ(古くさいジャズ)をやらせたりするんだもの。なんで?


カデンツァは、なぜかジャズドラムと、和太鼓。前者は即興だったのかな?とにかく退屈なドラムソロ。後者も「だからどうした」という感じ。


いちばん盛り上がるところは、なぜかオケと邦楽器が一緒になって12小節のブルースをえんえんとやる。


とにかくちゃらんぽらん
昭和30年代のコメディ映画のサウンドトラックみたいな感じで、そういうものだと思えば楽しめるけど、美的感動という点ではさっぱりでした。
せっかくすばらしい邦楽器奏者が集まっても、これではもったいないと思いました。*2


黛敏郎の「弦楽のためのエッセイ」は、小品であっという間に終わってしまった。


というわけで、最後の松村禎三交響曲一番」(1965)に期待するしかない。


しかしこれがすごかった。打ちのめされました。


ぼくはこの曲、むかしサントリーの「作曲家の個展」で聴いてるはずなんです。
ところが、そのときの印象はまるでない。
(そのときの演奏は都響尾高忠明だったらしい)


CDではよく聴いてます。とくに最近出た、湯浅卓雄&アイルランド国立響の演奏は優秀だと思う。


ですが、この日の下野竜也&日本フィルの演奏は、それをも吹き飛ばすような圧倒的なものでした。


まるで別の曲


この曲、決して聴きやすい曲ではありません。
厳しい響き。しかもぐじゃぐじゃ


地の底からマグマが沸きあがるさまを音にしたらこんな感じになるんじゃないか知らん?


下野竜也は、この複雑な曲を、すっきり明晰にまとめて、しかも最大限のエネルギーでもって放出してみせました。


下野竜也の指揮があたかも、荒れ狂う音塊を自在に操る、魔法使いか猛獣使いのように見えました。


はっきりしたメロディもテンポもない音楽が、これほど美しく響くものなのか。
思わず目を見張りました。


最後まで緊張感を途切れさせずに完走。おみごと。


かつて聴いた下野竜也&読響による黛の「涅槃交響曲」にならぶ名演だと思いました。


松村禎三のシンフォニーも、「涅槃」とならんで、日本人がつくった交響曲の頂点に位置する作品のひとつという気がしました。


やっぱり下野竜也はすごい。ほんとうにすごい


そして日フィルもすごい。エライ。


日本フィルは経営が苦しいそうなんですが、こんなプログラムをやってくれるなんて泣ける。
みんなで日フィルを応援しよう!


先入観なしで、日本人が作った曲を聴いてみましょう。そこには新鮮な驚きと、大きな美的感動が眠っています。
これを聴かないで、西洋人の「クラシック音楽」ばかり聴いているのは、あまりにもったいない。


でも、こんな曲を聴いていても、ぜったい女の子にはもてません!

*1:過去のブログを見たら、ぼくはどうも毎年7月に日本フィルの定期演奏会に行ってるらしい。

*2:こういう編成なら三木稔の「急の曲」を聴きたいです。

ブルガリアの超人シリーズその2

putchees2012-06-18


今回のアルバム

ペヨ・ピーヴPeyo Peev「Plentenitsa」
ブルガリア、Gega New GD328)


ナクソスミュージックライブラリー)
http://ml.naxos.jp/album/GD328

民族楽器ガドゥルカの名手


きょうもブルガリア音楽の超人をご紹介します。


ブルガリアの民族楽器、ガドゥルカGadulka。
ヴァイオリンの仲間だと思うのですが、構え方がぜんぜん違う。
ペルシャやトルコのラバーブに近いらしい。
弦が3コースで、それに共鳴弦がたくさんついてる。*1


アルバムの解説によると、もともと特定の地域でしか使われていなかった楽器だそうですが、20世紀後半から一種の復興運動みたいなものがあって、広く人気になったそうです。


その中から、何人もの名手が生まれてきたということですね。


今回ご紹介するのはペヨ・ピーヴPeyo Peev。正確な発音はよくわからないです。
まずは動画をご覧ください。



ね、すごいでしょ?


こっちは、前回紹介したペーター・ラルシェフPeter Ralchevとの共演。



こっちもぜひ。



こんな楽器ふたつで、なんというグルーヴ!


さいごにこちらをどうぞ。



もう何も言うことないでしょ?


もちろん、このアルバムもすごい。
驚くべき音の密度。そして独特の音色のすばらしさ。


ブルガリアの音楽の豊かな伝統に思わずため息がもれます。


民族の伝統に根ざした音楽のすばらしさに、目が開かれることまちがいありません。


ぼくはこうした音楽こそが21世紀の響き、未来の響きなのではないかと考えます。


いまや世界は小さくなった。だから、遠い国の音楽に身近に触れることができます。
これからは、まったく違った美観を持った外国人同士がお互いの伝統音楽にびっくりして、感動し、敬意を払う時代なのです。


お互いの差異を維持しながら、友情を深めるのです。


音楽に国境はある。だからすばらしいのです。


これ聴いてると、ブルガリアにいますぐ行きたくなります。
(それにしてもこのGega Newというレーベルはすばらしい仕事してる)


みなさんもぜひブルガリアの、そして世界の音楽の豊かさに触れてみてください。


ただ、こんなのを聴いてても女の子にはもてないんだよね。くやしいよ。

*1:チューニングはA-E-Aだそうだから三味線みたいだね。

ブルガリアの超絶アコーディオンにたまげる

putchees2012-06-10


今回のアルバム

ピーター・ラルシェフ「ブルガリア」Petar Ralchev: Bulgaria
ブルガリア、Gega New GD282)


ナクソスミュージックライブラリー)
http://ml.naxos.jp/album/GD282

バルカン半島は音楽の秘境


うーんすごいな。


バルカン半島にはまだまだすごいミュージシャンがいます。


国はブルガリア


アコーディオン奏者のペーター・ラルシェフ


そもそも軽快とは思えない楽器ですが、この人の演奏は驚くべきスピード感。


ジャンルは民族音楽といっていいでしょう。
エキゾチックなメロディを超早弾き。


たまげます。


このスピードとパッションはすごいでしょ。


こちらの動画をみてください。
2分ごろからが見もの。



すごいでしょ?


こちらもぜひ。



で、さいごに、ブルガリアクラリネットの超人イヴォ・パパゾフとの共演。
ちょっと音質が悪いけどぜひ聴いてほしい。



おおおおお!!!
なんかもう、アッパーなドラッグでもキメてるようなハイテンションだよね。
やみくもに元気が出るぜ!


彼はジャズやクラシック、フォークソングなど、ジャンルを横断して活動しているらしい。


このアルバムもすごい。
彼の10枚目のアルバムらしいけど、ブルガリアセルビアルーマニアの曲を演奏してます。
(あと、フランスのミュゼットもやってる)


ものすごく音が多くてかっこいいんだけど、決して上滑りにならない。


それは、彼の音楽が、血の通ったものだからでしょう。


バルカン半島土のにおいや、人の血のぬくもりが感じられる音楽だからです。


これこそ世界に通用する音楽でしょう。


伊福部昭が言ってた「民族的なものこそ世界的なのだ」という言葉がそのままあてはまります。


都会の退屈が生み出した人工的な音楽はむなしい。


やっぱりその国の伝統とつながる音楽こそが美しい。


ブルガリアには、ほかにもすごいミュージシャンがたくさんいそうです。
ぼくもこれからいっそう発掘につとめたいと思います。
いちど、ぜひ現地で聴きたいものです。


みなさんもぜひいちど、ブルガリアの音楽に触れてみて下さい。


ただ、こういう音楽を聴いてても女の子にはもてないけどね。

フィリピンのギター音楽を聴く

putchees2012-06-05


今回のアルバム

「フィリピンのスペイン・ギター音楽集」Ric Ickard (ギター)
POPULAR GUITAR MUSIC OF THE PHILIPPINES
(香港、ナクソス NAXOS 8.557759)


ナクソスミュージックライブラリー)
http://ml.naxos.jp/album/8.557759

初のフィリピン訪問


短い休暇を取って、マニラへ遊びに行ってきました。


初めてのフィリピンです。


マニラに見るようなところがあるかしらん?と思っていたのですが、ちゃんとありました。


スミマセン。


とくに、マニラ中心部のイントラムロスと呼ばれる歴史地区。


ここはスペイン植民地時代に、総督の住む城だったようです。


西洋風の城壁がめぐらしてあって、内側に街がある。


スペイン時代からの建築物が多く残されていて、雰囲気のある町並みです。


とくにサンオウガスチン教会は印象的でした。
立派な石造りの建物が、400年以上の時を経て残されているのです。


17世紀のはじめ、マニラには3000人以上の日本人が住んでいたそうです。


高山右近が最晩年に住んだのも、ここイントラムロスだったそうです。


彼もこの教会を見ただろうか?


そんなことを歩きながら考えておりました。


しかし、この一体の建物は、というかマニラ全体が、1945年のマニラ攻防戦で甚大な被害をこうむったのです。


当時ここを植民地にしていた合衆国と、日本帝国の間で、はげしい戦闘があったのですね。


第二次世界大戦の太平洋戦線で、合衆国軍と日本軍が都市戦闘を行った、数少ない場所のひとつなんですね。


フィリピンの人たちにとってはまことに迷惑千万な話ですね。


そして戦後、マニラはフィリピンの人たちの力で(よろめきながらも)発展してきたのですね。


サンチャゴ要塞という史跡から川の向こうを眺めると、貧しい人たちの住居がたくさん見えました。


フィリピンの複雑な歴史と現代のありさまが凝縮されている風景でした。


1898年以降、フィリピンは合衆国の影響で英語が優勢になりましたけど、いまでも地名や人名はスペインの影響が強いですね。


宗教は多くの人がカソリック


教会で熱心に祈る地元のひとたちを見ていたら、ラテンアメリカに来たような錯覚を覚えました。


400年間のスペイン統治の影響力はいまも消え去っていないですね。


で、ナクソスミュージックライブラリーを探したら、こんなのを見つけました。
フィリピンのギター音楽。
フィリピンの作曲家の作品をフィリピンのギタリストが演奏。


なかなかいいですよ。
いかにもスペインふう


さびしげで、味わい深い。


なるほど。
スペインは暴力をもたらしたけど、こういう音楽をもたらしたというのは、必ずしも悪いことではないですね。


フィリピンの過去を思いつつ、これを聴きます。
おすすめできます。


ただ、地味なので、これを聴いててももてないけどね。

ギーレンのベートーヴェンはかっこいい

putchees2012-06-01


今回のアルバム


ベートーヴェン交響曲全集(南西ドイツ放送響/ギーレン)
BEETHOVEN, L. van: Symphonies (Complete) (Gielen)
(独、Haenssler Classic CD93.285)


ナクソスミュージックライブラリー)
http://ml.naxos.jp/album/CD93.285

明晰かつ熱狂的


ミヒャエル・ギーレンと南西ドイツ放送響SWRによるベートーヴェン全集です。


以前この人のマーラーは聴いたけど、あまりぴんとこなかった。
ほかにもツェムリンスキーとか、いくつか聴いてるけど、それほど印象的ではなかったです。


ベートーヴェンはどうだろう?


文句なくかっこよかったです。


あまり詳しくないんですが、この指揮者は冷酷非情ってイメージなんですか?


聴いてみるとたしかに明晰。曇りのない澄み渡った音。
しかしそこにパッションがちゃんと込められている。
機械的に正確で、しかし人間的で情熱的な音。


4番の第一楽章でびっくりしちゃった。
なんとパワフルな。
個人的に、この曲のベストかも。


6番もよかった。例の嵐の部分は、ここを先途と荒れ狂う。


しかしほんとうのクライマックスは9番でした。


終楽章の最後、例の歓喜の歌が、なんかもう、エクスタシーという感じに聞こえる。


シンバルがバシャバシャ鳴りまくって、合唱は喉も張り裂けよとばかりに絶唱
そこへ前のめりのアンサンブルが拍車をかける。


こんなすごい第九はほんと初めてかも。
実のところ、あまり好きな曲ではないのですが、これはたしかにすごいわ。


呆然。あきれちゃった。


いやー、よかった。ギーレンかっこいい。
そして、やっぱりベートーヴェンは面白い。


一度聴いてみる価値はたしかにあると思います。
ただ、好き嫌いは分かれるでしょうね。
おれは文句なく好きです。


ただ、ギーレンのベートーヴェン全集って、いかにももてない音楽だよねぇ。

名旋律の力はかくも強し!

putchees2012-05-31


今回のアルバム

「Silence, on joue! A Time for Us」アンジェル・デュボーAngele Dubeau & ラ・ピエタLa Pieta
(カナダ、Analekta AN28733)


ナクソスミュージックライブラリー)
http://ml.naxos.jp/album/AN28733

映画音楽集


このアルバムはもてそうだ。
最近の映画音楽を、ヴァイオリンと大きめのアンサンブルで演奏してる。


ニーノ・ロータジョン・ウィリアムズジョン・バリーエンニオ・モリコーネハワード・ショア、ジェイムズ・ホーナー、ガブリエル・ヤレド久石譲の曲。


イージーリスニングっぽいんだけど、聴いてたらぐいぐい引き込まれちゃった。


やっぱりメロディ(名旋律)の力はすごい。


この作曲家たちは、特別な才に恵まれた人たち。
人の心をつかむメロディを書ける才能。


なんだかんだいっても、つまるところ音楽の魅力ってメロディに尽きるんです。


人が口ずさめるような音楽だけが後世に残っていくんですよ。


美しいメロディの力は、世界を変える力があると思います。
ビートルズを見れば、それは明白でしょう。


名旋律が人をとらえる力は、おそらく、一般に想像されている以上に強いものだと思いますよ。


このアルバムを聴いて、その思いを強くしました。


とくに久石譲


ぼんやり聴いていても、あ、これいい、と思わせるメロディ。


すごい才能です。


このメロディの魅力にはとうていあらがえない


そしてジョン・ウィリアムズシンドラーのリストのテーマ。


あ、やめて。これは自動的に泣いてしまう。やめてくれってば。


うーん。
音楽って、こういう名旋律のことをいうのかも知れないって思っちゃう。


マイナーでややこしい音楽ばかりじゃなくて、たまにはこういうものを聴くことも大切だなと思いました。
冷静になります。


これはもてる音楽だね。なので番外編扱いにしてください。