ナクソスの伊福部昭作品集発売!

putchees2004-12-02

伊福部サウンドが世界へ!


香港に拠点を置く廉価版クラシックレーベル
ナクソスの「日本作曲家選輯」の最新版は伊福部昭作品集です。


このシリーズは、日本の作曲家の現代音楽(クラシックの現代版)を
世界に向けて発信していこうという、野心的なシリーズです。


日本の現代音楽の作曲家というのは、武満徹を除いて、ほとんど無名なので
(世界的にはもちろん、日本国内でさえ)、それを世界のリスナーに向けて
売り出そうというのは、たいへん画期的な試みです。

ナクソスは、廉価版のレーベルですが、CDの品質は極めて高く、
ワールドワイドな販路を持つ、世界でも指折りの巨大CDレーベルです。
そのナクソスから日本人作曲家の作品集が出るというのは、
日本の音楽史上の一大事件と言ってよいほどです。


このシリーズでは、これまで大栗裕、諸井三郎、大澤壽人、松平頼則といった、
ほとんど忘れかけられていた作曲家の作品を発掘してきました。
そして、伊福部昭。このマイナーなシリーズの中では、
おそらくはもっとも多くのセールスが期待できる目玉タイトルです。
どんな品質に仕上がっているか、期待が高まります。

ゴジラだけではない


さて、その伊福部昭作品集、詳細はこちら↓

http://naxos.co.jp/8.557587J.html


伊福部昭(1914年生まれ)は、一般には映画「ゴジラ」シリーズの
作曲家として知られていますが、実はもともとオーケストラや声楽など、
現代音楽(純音楽・芸術音楽)の作家です。


待望のこの作品集、ついに11月30日、全国一斉発売になりました。


このCDには、彼の戦後の代表作3つが収められています。

曲目は以下の通り

  1. シンフォニア・タプカーラ(1954/1979)
  2. ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ(1961)
  3. SF交響ファンタジー第一番(1983)

ロシアのオケがガンガン鳴らす!


早速聴いてみましたが、楽しみにしていた「タプカーラ交響曲」が、
変な録音でがっかり。木管やトランペットだけやたらと大きな音で、
肝心のトロンボーンや打楽器の音が、ほとんど聞こえてこない。
なんだこりゃの珍演(珍録音?)で、この曲がこの程度だと思われたらはなはだ心外。
(ぜひ、芥川也寸志指揮など、ほかの演奏を聞いてください)


ただし、続く「リトミカ・オスティナータ」は好演。
ピアノ協奏曲ということもあって、楽器間のバランスもよくて、聴きやすいです。
とくにサランツェヴァの弾くピアノの強打ぶりは必聴もの。
まるでプロコフィエフのピアノ協奏曲2番か、バルトークピアノソナタのようです。
ロシアのオケとピアニストでよかったと思える演奏。
終曲部、ゲネラルパウゼ(オケとピアノがすべてぴたりと静まる瞬間)をはさんで
ピアノとオケががんがん盛り上がって「どうだ!」とおしまいになる瞬間は、
まさにオルガスムス。ああ、生きててよかった!目くるめくリズムの祭典!


最後の「SF交響ファンタジー」は、もはや伊福部の名刺代わりとなった曲。
怪獣映画のテーマ曲がつぎつぎとメドレーで登場します。
中学生男子あたりの脳天を直撃する必殺の名曲。これをバカにする人がいるけど、
じゃあレブエルタスの曲はどうなるんだよと反論したい。
彼の「マヤ族の夜」は、映画音楽の編曲版でしょ?
ショスタコヴィチやプロコフィエフコルンゴルトオネゲルは?
20世紀の作曲家にとって、映画音楽は欠かせないジャンルですよね。

安いから即買い!


あれこれ文句も書きましたが、「リトミカ」の演奏だけでも、買う価値はあり。
特に、伊福部昭の芸術音楽を聴いたことのない人なら、買って絶対損はしません。
評論家・片山杜秀さんによる解説も懇切丁寧で、一読の価値あり。


これで市価890円は安い!いますぐCDショップへGO!!



ただし、これを聴いてもぜったい女の子にはもてません。