新宿ピットインで梅津和時を聴く!

putchees2005-03-20


今回はライブ報告です

梅津和時 プチ大仕事2005 part1
3月19日20:00〜22:30
場所:新宿ピットインPIT INN

ミュージシャン

キングサラマンダーズ・スイング
梅津和時(アルトサックスalto sax)
片山広明(テナーサックスtenor sax)
谷中敦バリトンサックスbaritone sax)
上村勝正(ベースbass)
斉藤良一(ギターguitar)
藤乃家舞(ベースほかbass,etc)
クハラカズユキ(ドラムスdrums)

マルチな才能のサックス奏者


ロック系のリスナーにはRCサクセションのサックス奏者として、
ジャズ系のリスナーには生活向上委員会、どくとる梅津バンドDUBで知られる
アルトサックス奏者、梅津和時(うめづ・かずとき)のライブに出かけてきました。


場所は新宿ピットイン。
昨年(2004年)六本木ピットインがなくなったので、
東京でピットインといえばここしかないのですが、
頭に「新宿」とつけて呼ぶほうが、このライブハウスらしい気がします。


ちなみに、東京でいちばんのジャズクラブというと
青山ブルーノートだと思っている人がいるかも知れませんが、とんでもない。
ほんとうはここです。


トラブルで帰国できなくなったエルヴィン・ジョーンズElvin Jones
連夜セッションを繰り返したのも、


ただ一度来日したサン・ラSun Raがライブ盤を残したのも、
このライブハウスです。


お友だちの外国人にもそう教えてあげましょう。
ホンモノのジャズを聴くならここだと。

7人編成でヘヴィなファンク!


さて、今夜は、5夜連続のセッション「プチ大仕事2005」の初日でした。
梅津和時のアルトに、テナー、バリトン、ベース、ギター、ドラムス、
それにノイズ担当(?)のベースがもうひとりという編成でした。


音楽は、ひとことでいえば、ジャズファンクでしょうか。
大音量でノレるビート。たいへん痛快でした。


2セットで全8曲。ちょっと食い足りない気がしましたが、
5夜連続の初日ということを考えると、やむをえないところでしょうか*1


バリトンサックスは、東京スカパラダイスオーケストラ谷中敦*2
テナーサックスは、渋さ知らズにこの人ありの片山広明でした*3


どちらもブリブリと心地よいソロを取ってくれました。
女性のお客さんが多かったのは、谷中敦目当てだったのでしょうか。
ぼくは、片山広明目当てだったのですが*4


いつも感心するのですが、梅津和時の連れてくるミュージシャンは、
みんな抜群に楽器がうまいです。
ベースもドラムスも、そうとうの腕とお見受けしました。


自分のソロの順番に関係なくむやみにノイズを発していたふたり目のベーシストも、
きっと、梅津和時は計算ずくで加えているのでしょう。
異化効果っていうんですか? そういうのを狙って、
アンサンブルがまとまりすぎるのを意識的に抑えている気がします。


バンド全体のサウンドを考えて音楽を作ることができるかどうかが、
いちサックス吹きと、バンドリーダーの差だと思うのですが、
梅津和時は、あきらかに後者です*5


バンドを組んで、サウンドを作り上げることのできるミュージシャンですね。
ただもちろん、音楽の才能だけで、バンドが運営できるわけではありません。


個人的に知っているわけではありませんが、
梅津和時は、たぶん、すごくいい人だと思うのです。
自分のバンドなのに、自分のソロはいつも後回しで、時間も短め。
共演者を立てて、リーダーは一歩下がるという姿勢です。


それゆえ、いくつものバンドを組んでうまくやっていけるのでしょう*6
ただもうちょっと、リーダーのアルトサックスを聴きたかったなあというのが、
きょうのステージを見た正直な感想です。

やっぱりいいアルトサックス吹きだった!


ぼくは、梅津和時を聴いたのは、実は1997年ごろの「ベツニ・ナンモ・クレズマー」以来、約8年ぶりでした。
ひさしぶりに聴いて、いいアルトサックス吹きだということをようやく認識しました。


というのも、梅津和時のアルトサックスは抜群にうまいのですが、
楽器がうますぎるせいなのか*7
片山広明のテナーのように、強烈に印象に残るアクの強さには欠けている気がしていました。


あと、バンドのサウンドやアレンジがかっこいいものですから、
バンドのことは印象に残っても、
肝心の梅津和時のアルトの印象が薄かったのです。
「器用貧乏」などという失礼な言葉が頭をかすめたものです。


それは、リーダーとしての自覚から、自分のソロよりもバンド全体の
サウンドやアンサンブルに気を配っているせいなのかもしれません。


ただ、きょうは輝かしい音色で、スピード感にあふれるソロを聴かせてくれました*8
ああ、やっぱりいいアルト吹きなんだなあと思い至りました。


だからこそ余計に、アルトサックスソロが短かったことが、残念だったのです。


明日は佐藤允彦(ピアノ)とサム・ベネットSamm Bennett(パーカッション)の3人で
「グレート・インプロ*9 」セッションだそうです。


ぼくは行けませんが、そのステージではきっと、看板通り、
ブリブリとすごいアドリブを聴かせてくれることでしょう。


とにかく、ジャズは、その人のアドリブソロを聴くのが楽しみなのですから、
ぼくはこれから、梅津和時その人のソロに注目していきたいと思います。


食い足りない感はありますが、
見に行ってよかったと思わせてくれるステージでした。

おみやげは生活向上委員会の写真集!


ちなみに、きょうのおみやげは、70〜80年代にかけて活動したバンド
「生活向上委員会大管弦楽団」のレアな写真集でした*10


若き日の梅津和時や片山広明と一緒に、
すでに世にない篠田昌已(アルトサックス)、板谷博(トロンボーン)の姿が写っています。


こんな貴重なものをくださった梅津さんに感謝の念でいっぱいです。


梅津和時プチ大仕事2005」は、来週の水曜(3月23日)まで続くようですから、
彼のバンドをいちども聴いたことがないという人は、ぜひ足を運んでください。


ちなみに、最終23日は、チャボこと仲井戸麗市が出演するようですよ*11
ファンの方はお見逃しなく。


ぼくも余裕があれば、あと1日くらいは足を運んでみたいと思います。


ただ、こんな音楽を聴いていても、女の子にはもてないですよねぇ、やっぱり。

*1:ただし、5夜それぞれまったく違ったバンドです。

*2:詩集も出してますね、この人は。

*3:ちなみに片山広明も、RCサクセションのサックス担当でした。

*4:渋さ知らズと片山広明については、本レビューの2004年12月21日に書いていますので、よかったら読んでください。id:putchees:20041221

*5:ただちょっと今夜は、いささかリハーサル不足という気がしました。

*6:阿部薫の思い出に寄せた文章で、梅津和時は、自分勝手で協調性のない阿部薫に対して怒り心頭に発した思い出を語っています。おそらく梅津は、(同じアルト吹きですが)阿部薫とはまったく正反対の性格でしょう。阿部薫については、本レビューの2004年12月22日分に書いています。id:putchees:20041222

*7:ちなみに彼は国立音大卒です。

*8:ジャズにおけるスピード感の重要性については、2月16日のレビューを参考にしてください。id:putchees:20050216

*9:Great Improvisationのことか

*10:梅津和時の自宅から発掘された品だそうです。ちなみに生活向上委員会とは、略称「生向委→セイコウイ」を、「性行為」とかけたしゃれから発案された名前。

*11:昨年はなんと忌野清志郎が出演してます。