松村禎三のもてない音楽を聴け!

putchees2008-02-03


ひさびさです


しばらく更新を怠っておりました。
スミマセン。


何事もなかったかのように更新します。

CD紹介です


【今回のCD】
松村禎三の世界」(CD2枚組)
(TOWER RECORDS VICTOR 2007)
CD番号:NCS-589


【曲目】
●「EXPO‘70」〜1.飛天(アプサラス)2.祖霊祈祷 3.詩曲
交響曲
管弦楽のための前奏曲
弦楽四重奏とピアノのための音楽
アプサラスの庭
ギリシャに寄せる2つの子守歌
●阿知女−ソプラノ、打楽器と11人の奏者のための
(1969-81年録音)


【演奏】
若杉弘(指揮) 読売日本交響楽団
石丸寛(指揮) 東京交響楽団
東京混声合唱団 青木静雄(尺八)野坂恵子(琴)
坪田昭二(P)巌本真理弦楽四重奏団
泉浩(Fl)小林健次(Vn)一柳彗(P)
遠藤郁子(P)
田中信昭(指揮)常森寿子(S)ほか

作曲家・松村禎三


松村禎三の作品集です。
タワーレコードの好企画。
2枚組で1500円ですから、お得です。


松村禎三は1929年生まれの作曲家。
昨年、惜しくも亡くなりました。


このCDには、彼の代表作の多くが
(オペラ「沈黙」とピアノ協奏曲を除く)
収められています。


松村禎三のことは、以前取り上げたことがあります。
id:putchees:20050122


暑苦しくて、いかにももてない音楽を書く大家です。


いつも軽くておしゃれな音楽を聴いている人が、
たまに気分を変えて、
重くて深刻な音楽を聴きたい、というときにぴったりです。


この2枚のCDを聴けば、松村禎三の音楽がどのようなものであるかは
おおよそ理解できるでしょう。

大いなるマンネリ


わたしがオススメするのは、
交響曲」と「阿知女」、それに「ギリシャに寄せる2つの子守歌」です。


もちろん、そのほかの「管弦楽のための前奏曲
弦楽四重奏とピアノのための音楽」もおすすめです。


なんといっても、どの曲も芸風がまったく同じなのがすばらしい。


重々しく始まって、
ぐわらーんとでっかい音で終わるのです。


甘いメロディや美しいハーモニーを
期待してはいけません。


もやもやした音のかたまりがワジャワジャと
もつれあうような音です。


音楽というよりは音響といったほうがいいかも知れません。


しかし、いわゆる「前衛音楽」と違うのは、
松村禎三の作品は芯が太く、どっしりとしているということです。


たとえるなら古い素朴な仏像です。


プリミティブで単純なのに、
生命力やボリューム感があるのです。


これこそが松村禎三の魅力です。


西洋の作曲家の作品で、似た傾向の音楽を探すのはムツカシイのです。


それもそのはず、松村禎三は、
西洋とはまったく違った音楽のカタチを追い求めていたのですから。


オーケストラや弦楽四重奏という「楽器」は同じでも、
まったく違った音を引き出して見せようとしたのです。


その手際は見事です。
不器用なのですが、まさに労作。
日本やアジアの五音音階などは使わないで、
アジア的なバイタリティを表現しています。


ぜひ彼の「交響曲」を聴いて、
サウンドの厚みに圧倒されてください。


そして「阿知女」を聴いて、
古代の血みどろの祭祀を空想してみてください。


いろんな音楽に興味を示す
物好きには、たまらない魅力のはずです。

買うならいま!


口直しには、
ギリシャに寄せる2つの子守歌」をどうぞ。


この曲だけはなぜか愛らしい、センチメンタルな
ピアノ独奏曲です。
松村禎三の弟子、吉松隆もお気に入りの曲だそうです。


このCD、録音は古いですが、
内容はじつにすばらしい。


たぶん、初回プレス売り切りだと思うので、
お早めにどうぞ。


ちなみに、今年はナクソスNaxos
日本作曲家選輯」シリーズで、
松村禎三作品集の発売が予定されています。


そちらも楽しみに待ちましょう。


もちろん、こんな音楽を聴いていても、
女の子にはぜったいにもてません。


(この稿完結)