マリン・オルソップは恐るべき指揮者だ!

putchees2010-01-24

今回はコンサート報告です


【今回のコンサート】
読売日本交響楽団第489回定期演奏会


【日時】
2010年1月22日(金) 19:00
(東京・サントリーホール


【ミュージシャン】
指揮:マリン・オルソップMarin Alsop
管弦楽読売日本交響楽団


【曲目】
●バーバーBarber:交響曲第1番
マーラーMahler:交響曲第1番〈巨人〉

ナクソスでおなじみ


読響のコンサートに行ってきました。


最近、読響を聴くことが多い。


多彩な指揮者で、面白い曲目を演奏してるからだな。
演奏内容にも満足してます。


さて今回。
指揮者は、マリン・オルソップ。
アメリカの女性指揮者
ナクソスレーベルに、大量に吹き込んでる。


ぼくは彼女が振るバーバーの演奏が好きなんだ。


だから聴きに行ってきたよ。


聴いてビックリ。


CDじゃわからない。
恐るべき指揮者だった。

バーバーが最高


さてバーバーだ。


交響曲一番は、聴いたことがない曲。


読響の演奏は、
最初はエンジンがかからない感じだった。


ところが、途中から歯車がカチッとはまった感じ。


オルソップのバイタリティあふれる指揮が、
オーケストラをぐいぐい推進させる。


彼女の指揮は、実に堂々としたもの。


ぼくが感じたのは、
「女性」というよりアメリカ」だった。


オルソップは、よい意味のアメリカそのものという気がした。
明晰で、力強く、意志的なのだ。


バーバーのシンフォニーは、
だから、彼女の指揮にぴったりなのだ。


モダニズムの申し子のような、
複雑で、クールで、巨大な音楽*1


指揮も演奏も、そうとうムツカシイに違いない。


しかしオルソップは、
いささかの逡巡もなく、
最初から最後まで振り切った。


読響も、途中からは彼女の指揮の
忠実なしもべとなって鳴り響いた。


さいごは堂々たるフィナーレ。


スゲエ!


客席から、いきなりブラボーが飛び出した。

マーラーも最高


さて後半はマーラーの一番。


ぼくは、マーラーが苦手なんだ。


だから、生で聴くのは初めてだったんだ。


途中で眠くなるかな?


とんでもない。


退屈するどころか、期待でこぶしを握りしめて
全曲を聴き終えたよ。


最高のマーラー初体験でした。


マーラーが嫌いだなんて、
みずからの不明を恥じるのみです。


なんでマーラーが苦手だったかというと、
彼のシンフォニーは、
人生の多様な出来事を、省略せずにそのまま押し込んだ小説のような、
あるいは、車輪はたくさんついているのに、それらが
四方八方に向いていて、ひとつの方向にうまく進まない車のような、
そんなイメージをぼくに与えるんだな。


さてオルソップの演奏だ。


彼女は、さっきの曲と同じ流儀で、
マーラーのシンフォニーをぐいぐい進めていく。


よくわからないけど、
快速だったんじゃないでしょうか?


ひとつひとつのフレーズが、
メリハリをつけて、印象深く演奏される。


CDではぼんやりした輪郭だと思った音楽が、
クッキリハッキリ明瞭に描き出される。


これは、好き嫌い分かれそうな演奏だなぁ。


でも、ぼくは大歓迎。
だって、マーラーのぼんやりしたところが苦手だと思っていたから。


オルソップの指揮で、
あっちこっち向いていた車輪がひとつの方向に修正され、
音楽が推進力を持って動きはじめる。


おお!
こんな音楽なら大好きだよ。


マーラーのシンフォニーがこんなふうに聞こえるなんて!


一度エンジンに火がつけば、あとはもう止まらない。
一気呵成にフィナーレまでまっしぐら。


さいごは大音響で悶絶寸前。


思わずブラボーを叫んじゃったよ。
こんなの初めてかも。


いやあ、すごかった。


想像をはるかに超える楽しい体験でした。


すごいすごい。
オルソップすごい。


この夜の数少ないお客さんはトクしたよね。


26日と27日にもオルソップが
東京で聴けるみたいだから、
音楽好きはぜったい行ったほうがいいと思うよ。


ただ、女の子にもてる音楽ではないなあ。


オルソップ自身は実に「男前」で、
女性にも男性にももてそうだけどね。

*1:オケ自体も大編成だったよ。