下野竜也&読響のヒンデミットにしびれる

コンサート報告です


【今回のコンサート】
読売日本交響楽団
第506回定期演奏会
2011年7月19日(火) 19:00


会場:サントリーホール
指揮:下野竜也
管弦楽読売日本交響楽団


《下野プロデュース・ヒンデミット・プログラムVI》
ヒンデミット/〈さまよえるオランダ人〉への序曲
〜下手くそな宮廷楽団が朝7時に湯治場で初見をした〜
下野竜也編・弦楽合奏版、世界初演
ヒンデミット管弦楽のための協奏曲 作品38(日本初演
ブルックナー交響曲 第4番 変ホ長調 WAB.104〈ロマンティック〉(ハース版)

下野竜也は日本一


二日続けてサントリーホールに行ってきました。
きょうは読響の定期。


大好きな下野竜也が読響でヒンデミットを振るんだ。
聴かないわけにはいかないよ。


ぼくは、下野&読響は、日本最高のコンビだと思ってるんだ。


台風近づく火曜日のサントリーホールは、
6割の入りといったところ。
でも、こんな日によくお客が来てくれたと思います。


さあ一曲目はヒンデミットの有名な冗談音楽


オルガンの前に、「ようこそ読響温泉」書いた札が立ってる。
その隣に、巨大な時計が置いてある。
曲名にちなんで、7時ちょうどに始めようってわけだ。
指揮台の代わりに、ケロリンが山積みになっている。
いい演出だね。


で、7時ちょうどに、弦の奏者たちがかったるそう
舞台にのぼってくる。


ハッピや手ぬぐいで雰囲気を出してる。


最後に、下野竜也ハッピ姿で登場。
「いやあきょうは暑いね」なんて言ってる。
で、演奏開始。


最初の和音がもうおかしい


解説の刷り物に書いてあったけど、
「個人練習などしていない奏者がしそうなミスを全て犯し、
しまいには適当にワルツを弾き始める」


という、まさにそういう音楽。
ヴァーグナーの名曲が、どんどんおかしくなる。


面白かったけど、
今回のは、弦楽四重奏弦楽合奏に編曲したものだから、
各パートはぴったり合ってて、ちょっと変な感じ。


でも、こんな珍曲が聴けただけでうれしいよ。


最後に、オルガンの前の札がくるりと回って、
「読響はヘタクソではありません」
と書いてある。


ニクイ演出だね。
さすが下野竜也。さすが読響。

ヒンデミットの真骨頂


2曲目もヒンデミット
管弦楽のための協奏曲」って、
今回が日本初演だったらしい。


そういや、ぼくもこの曲は聴いたことなかった。
ヒンデミット大好きだけど、
なにしろ彼は多作だから、
聴いたことない曲がたくさんあるんだよね。


で、この曲。
タイトルの通り、いろんな楽器がソロを取って、
めまぐるしく交代する。


これをアンサンブルで合わせるのはムツカシそう。
しかしカッコイイ。


クールでハードボイルド
ヒンデミットの真骨頂だね。


下野竜也のタクトが冴え渡る。
なんて明晰でパワフルなんでしょう。


そして弦がすばらしい。
どのパートもすばらしいアンサンブル。
うーん、やっぱり読響の弦は最高だね。
(もちろん管打楽器もきらびやかに鳴ってます)


クールな響きのまま、ガンガン盛り上がっておしまい。


最高だ。
下野竜也ヒンデミットの組み合わせは
もてない音楽」の極北だ。

ブルックナー


後半はブルックナーの4番。


実は、ブルックナーを生で聴くのは初めてなんだ。
理由は苦手だから。


第一に、長い
第二に、長い
第三に、メロディがない


敬して遠ざけたいクラシックの筆頭なんです。


でも、気になる作曲家でもある。


だからちょっとだけ楽しみでした。


結論から言うと、
それなりに楽しかったです。


ただ、緩徐楽章では寝そうになっちゃった。


ゆっくりになると、メロディのセンスなさが致命的だね。
かったるくて、聴いてらんない。


それ以外は、眠気に勝利しました。


弦もよく鳴ってたし、
金管もきらびやかに鳴っていた。


下野竜也のタクトも冴えていた。
繰り返しの部分を、少しずつニュアンスを変えて演奏していたよね。


なにしろ読響は、
ここ数年では確実に、日本でもっとも多く
ブルックナーを演奏したオーケストラでしょう。


悪いはずがありません。


もちろん、ぼくは「ふつうのブルックナー」を
よく知らないので、評価のしようがないんですが。


それにしても、
ブルックナーってヘンな作曲家だ。


芸風はたったひとつ。
伊福部昭もびっくりのマンネリの王様だ。


で、メロディがなくて、ほとんど
響きとダイナミクスだけで一時間以上オーケストラを鳴らしてしまう。


これは不思議なことです。
同時代のリストやらと比べてみると、
その差は歴然。


感傷がいっさい入っていないような音楽だから、
現代人の耳にも、それほど古くさく感じない。


まさに音楽史上のユニークな(唯一無二の)存在です。


好きではないけど、やっぱり気になる作曲家ではあります。
きょうは、とくに最終楽章を、じゅうぶん楽しんで聴きましたよ。


終演後は、ブラボーの声がたくさん響いておりました。
やっぱりこのコンビはいいなあ。


繰り返すけど、ヒンデミットがとにかくよかった。


日本が世界に誇る下野竜也と読響、
ぜひいちど試していただきたいものです。


ただもちろん、ヒンデミットブルックナーなんて
聴いてたら、女の子にはぜったいにもてません。
(これは自信ある)