矢代秋雄のピアノ協奏曲を聴いてきた!

putchees2006-10-31


日本の名曲


今回は、クラシック(現代)音楽です。
日本人が作った、
名曲中の名曲をご紹介します。


女の子にはきっともてないけど、
とにかくスリリングなオーケストラ曲です。


興味の湧いた方は、ぜひ下までお読みください。

今回はコンサート報告です


【今回のコンサート】
読売日本交響楽団 第453回 定期演奏会
サントリーホール開場20周年記念公演)


【日時】
10月20日(金)19:00〜21:00
東京・赤坂:サントリーホール


【曲目】
クセナキスIannis Xenakis:ホロスHoros(1986)
矢代秋雄(やしろ・あきお):チェロ協奏曲(1960)
矢代秋雄:ピアノ協奏曲(1967)
望月京(もちづき・みさと):メテオリットMeteorites(2002)


【ミュージシャン】
指揮:ゲルト・アルブレヒトGert Albrecht
管弦楽読売日本交響楽団
ピアノ独奏:中村紘子
チェロ独奏:堤剛

もてないコンサート


今回出かけたのは読売日響(読響)のコンサートでした。
指揮はゲルト・アルブレヒト(写真の人物です)。


1960年代以降に作られた現代曲ばかりのプログラムです。


いかにももてない曲目です。
こんな演奏会、デートにはぜったいに使えません。


したがって、客席はがらがらでした。
残念ですが、やむを得ないと思います。


さて、ぼくの目当ては、
矢代秋雄(1929-1976)のピアノ協奏曲でした。


この曲、いかにも現代曲らしく、
角張ったリズムと厳しいハーモニーが支配しています。


甘いメロディやハーモニーはどこにもありません。


しかし、まるでサスペンス映画のような
スリルと緊張感に溢れています。


初演以来、日本人のオーケストラ曲としては異例なほど、
何度も演奏されています。


それだけの名曲だということです。


録音を聴いても真価がわからないと思っていたので、
今回のコンサートを心待ちにしていました。

カレーのCMでおなじみ


さて、今回のピアノ独奏は、テレビなどでおなじみの
中村紘子(なかむら・ひろこ)でした。


中村紘子


彼女は、この曲の初演者です。
いわゆるクラシック曲しか弾かないのかと思っていたら、
こんな現代曲にも挑戦していたのですね。


もっとも、ぼくとしては、若いピアニストにばりばり弾いて
ほしかったのですが、しかたありません。


なにしろ高度な技巧を必要とする難曲なので、
初演から40年も歳を取った彼女が
ちゃんと弾けるかどうか心配だったのですが、
とりあえずちゃんと弾けてたと思います。


実演を聴いて、やはりうならされました。
なんというスリリングな音楽でしょうか。

まるでサスペンス映画


矢代秋雄の「ピアノ協奏曲」は
全3楽章で、演奏時間は30分足らずです。
ピアノとオーケストラがガンガン鳴りまくります。


サスペンス映画にあてはめるなら、
第1楽章は導入部です。登場人物紹介という感じ。
チチ、チチ、チンチチというテーマが非常に印象的です。


第2楽章は、神秘的な単音の連打から始まります。
事件が起こる予感をはらみつつ静かに進んでいきます。
そして、突如訪れる悲劇。


第3楽章は、めくるめくクライマックスです。
圧倒的な音の流れがぐんぐん迫ってきます。
二転三転のどんでん返しです。
そして有無を言わせぬ結末。


実にドラマチックで、手に汗握ります。


知性的で、洗練されています。
構成がたくみです。


甘いメロディがなくったって、
人をこれだけ興奮させられるのはまったくすごい。


聴いたあとで、チチ、チチ、チンチチという第1楽章のテーマを
思わず口ずさんでしまいました。

寡作の作曲家


矢代秋雄は、1929年生まれです。
伊福部昭の、というよりはメシアンMessiaenや
ナディア・ブーランジェNadia Boulangerの弟子として知られています。


矢代秋雄


1951年、黛敏郎別宮貞雄と一緒にパリに渡った
矢代秋雄は、コンセルヴァトワールConservatoireで
アカデミックな作曲法をじっくり仕込まれます。


そして1956年に帰国したのち、藝大の教授をしながら、
彫心鏤骨の作曲を続けます。


彼は46歳で亡くなりましたが、
生前発表されたオーケストラ曲は、
わずか三つでした。


それだけ、完成度の高い曲を作ることに
情熱を傾けていたようです。


ピアノ協奏曲の完璧な名曲ぶりにも納得させられます。


今年は矢代秋雄没後30年ですが、
このピアノ協奏曲は、
今後も繰り返し演奏されていくでしょう。


もし興味を持った方がいれば、
ぜひ、ナクソスから出ているCDをお買い求めください。
岡田博美のピアノ独奏がすばらしい出来ばえです。
http://www.hmv.co.jp/PRODUCT/DETAIL.ASP?SKU=303785


日本作曲家選輯矢代秋雄

そのほかの曲について


さて、この日は、堤剛(つつみ・つよし)の独奏で、
矢代秋雄チェロ協奏曲も演奏されましたが、
残念ながら、ぼくは居眠りしてしまいました。


堤剛の音色がすばらしいなと思っただけでした。


コンサートの冒頭は、ヨーロッパ前衛音楽の雄・
クセナキスのオーケストラ曲でした。


しかし、オケがなにやらモワーン、グワーンといっているうちに
終わってしまいました。


なんのこっちゃ。*1


コンサートの最後は、1969年生まれの日本人作曲家・
望月京のオーケストラ曲でした。


これもモワモワした曲でした。
各種パーカッションがすっとんきょうな音
立てていたことだけ覚えています。


この曲もやっぱり、なんのこっちゃ。


いかにもヨーロッパで作曲を勉強してきました
みたいな曲でした。
ほんとにほんとにご苦労さんという感じがします。


ぼくはやっぱり、音楽らしい音楽を聴きたいものです。


別にメロディやリズムがなくてもかまわないのですが、
最低限、ドラマチックな音の流れだけはあったほうがいいです。


だって、そうじゃないと聴いててつまんないんだもの。
みなさんもそう思いませんか?

これぞもてない名曲!


かくてコンサートは終わりました。
矢代秋雄のピアノ協奏曲のすばらしさだけが印象的でした。


みなさんもぜひ一度、この名曲を聴いてみてください。
音楽好きなら、決して損はしないと思いますよ。


CDでもいいのですが、
機会があれば実演を見ることを強くオススメします。


ピアニストが腕を振り回しながらがんがん弾きまくる姿は、
見せ物としても一級品です。


名人芸を見ることは、クラシック音楽の楽しみのひとつですからね。


そして、日本にこんなすごい曲があったのか、
と、驚きあきれてください。


戦後日本が生んだ、
まさしく現代の古典(クラシック)です。


ただもちろん、こんな曲を聴いていても、
女の子にはぜったいにもてません。


(この稿完結)

*1:クセナキスの曲なので、そういうものだとはわかっていましたけど。