「前衛の王者」ジョン・ケージのいかしたピアノ曲を聴いてみる

putchees2007-02-01


今回はCD紹介です


【今回のCD】
ジョン・ケージJohn Cage (1912-1992)
プリペアド・ピアノのための作品全曲」(3CD)
Complete music for prepared piano
(2006年 Brilliant Classics 8189)


【ミュージシャン】
●ジャンカルロ・シモナッチGiancarlo Simonacci
プリペアド・ピアノprepared piano)
●V.ガリレイオーケストラOrchestra V. Galilei(管弦楽orchestra)
●ニコラ・パスコフスキNicola Paszkowski(指揮conductor)

「前衛作曲家」の作品集


昨年末に買ったCD、
ジョン・ケージ作曲の
プリペアド・ピアノのための作品全集を聴いております。


3枚組です。


これが、めっぽう面白い。


ジョン・ケージといえば、
4分33秒だけが有名なアメリカの現代作曲家です。


ジョン・ケージ


実際、彼の作品には実験的な作品が多いのですが、
そんな彼が発明したのがプリペアド・ピアノという楽器です。


実験好きの彼らしい発明です。
プリペアド・ピアノとは、普通のピアノの弦に
消しゴムネジをはさんで、
まともな音が鳴らないようにしたものです。


ピアノの典雅な音が、
まるでパーカッションやノイズのような音に変わります。


当然音程も狂って、まともなメロディが弾けなくなります。


いかにも現代曲という感じです。


ぼくは昔、ジョン・ケージ
オーケストラ曲のコンサートに出かけたことがありましたが*1
ピアノ独奏の一柳慧*2がピアノを弾きながら
音の鳴るスプリングをびょんびょん鳴らしていたりとか、
指揮の高関健*3が拍子を振らなくて、
代わりに両手で残り時間を示していたりとか、
いかにもけったいな音楽だったので、
あまりいい印象がありませんでした。


ジョン・ケージに対する
そんなネガティブなイメージが、
このCDを聴いて消滅しました。


カッコイイじゃん!!

ピアノが民族楽器に変身!?


このCDに収められた、初期(1940〜45年ごろ)の
プリペアド・ピアノ曲では、
あたかもガムランやアフリカ音楽のような音が聞こえてきます。
メロディもテンポもしっかりとあって、
めっちゃかっこいいです。


これがピアノの音!?
まったく新しい楽器を聴くような驚きです。


思うに、このころのケージは、
西洋音楽の頂点に位置する、
お高くとまったピアノという楽器を、
プリミティブな、西洋音楽の領域にまで
引きずりおろそうとしたのではないでしょうか。


そして、機械的に完成されることで
音の生々しさを失ったピアノという楽器に、
原始的なバイタリティ
取り戻そうとしたのではないでしょうか。


そんな気がするエネルギッシュな、
楽しい曲が満載です。


ぼくが気に入ったのは、
「Bacchanale」「And The Earth Shall Bear Again」
「Primitive」「The Unavailable Memory Of」
などです。


バツグンに面白いです。


CDの2枚目以降は、
いかにも前衛っぽい音響になってしまって、
退屈してきます。


とはいえ、ちょっと風変わりなBGMだと思えば、
それなりに楽しいかもしれません。


プリペアド・ピアノのための協奏曲なんていうのまで
収録されています。


このCD、廉価版の新王者ブリリアントクラシックス*4
リリースですから、値段はなんと、
3枚組で1400円くらい。


ジョン・ケージという作曲家を見直しました。


クラシックや現代曲が好きかどうかは関係なく、
ちょっと変わった曲がお好きな方には超☆オススメです。


もっとも、こんなCDを聴いていても、
女の子にはぜったいにもてません。


(この稿完結)

*1:2002年、サントリーホールのサマーフェスティバル。

*2:いちやなぎ・とし:ケージの弟子で、オノ・ヨーコの元夫

*3:たかせき・けん:現代の日本を代表する指揮者。

*4:旧王者はナクソスNaxos