リゲティの5枚組ボックスを聴く!

putchees2008-06-20


いまでも「前衛のチャンピオン」か!?


ジェルジ・リゲティLigetiといえば
ペンデレツキやシュトックハウゼンと並んで、
かつての前衛のチャンピオンだ。


しかしその3人のうち、生き残ってるのは
ペンデレツキだけだ。


リゲティは2006年に死んでしまった。
というわけで、おそらく追悼企画なのだろう、
テルデックレーベルの録音集が出た。
その名も「リゲティ・プロジェクトThe Ligeti Project」
(ワーナー・テルデック2564696735)


CD5枚組。
約4000円だったから、
現代音楽のCDとしては安い。


聴いてみると、意外にまともな音楽が多い。
管弦楽のためのルーマニア協奏曲」(1951)なんて、
まさに民族派音楽。


バルカンふうのエキゾチックなメロディがてんこ盛りだ。
へー、こんなの書いてたんだ。


まったく偶然だが、リゲティ
前回紹介したエネスコと同じ、
ルーマニア出身の作曲家だ。
リゲティハンガリー人だけど)


無伴奏チェロソナタもいい。
そういや、リゲティコダーイの弟子だったのだ。


アコーディオン独奏のための「ムジカ・リチェルカーレ」なんてのも
面白かった。


多くの曲を聴いて感じたけど、
意外にジャズの影響が強いと思ったね。
パーカッションがいて、リズム優位の作品だと、
どうもフリージャズぽく聞こえるぞ。


あと、ときどき唐突にポップなメロディが
出てくるのも意外だった。


なんだ、フツーの作曲家じゃん、
と思いましたね。


もちろん、ヘンテコな曲も多い。
テープとか、シンセサイザーの曲とか。


中でもきわめつけは「レクイエム」だろう。
悲しみのあまり合唱団がてんでに泣きわめくような音楽だったよ。


しかし、そういうヘンテコな曲を聴いても、
「前衛」という印象は希薄だった。


アヴァンチュール」も「ピアノ協奏曲」も、
その他、作曲当時は「実験的」「前衛的」であったであろう作品も、
もはやぼくの耳には、普通の音楽に聞こえてしまう。


ベルクやヴェーベルンの親戚くらいの印象だ。


個人的にぼくの耳がノイジーな音楽に慣れたっていうのもあるだろう。
しかし、それよりおそらく重要なのは、時代はもはや2008年だってことだ。
21世紀まっただ中だ。


いいかげんリゲティの音楽だって古びるだろうよ。


「20世紀の前衛」は、
リゲティシュトックハウゼンが墓に入った今、
めでたく「20世紀の古典」になりました。
…と、そういうことなんじゃないかしらん?
ぼくはそう考えた。


というわけで、このボックスセットは、
ごく普通の「クラシック音楽」として聴けるだろうと思うのだ。
少なくとも、マーラー以降の音楽は受け付けないという
一部の人を除いては。


だから、ぼくが自信を持っておすすめする次第です。


もちろん、こんなのを聴いていても、
女の子にはぜったいにもてないけどね。