能天気だっていいじゃないか!ミヨーを聴こう

putchees2009-03-18


ひさびさにCD紹介です


【今回のCD】
ダリウス・ミヨー管弦楽&ピアノ作品集」
(オランダ、ブリリアントクラシックBRL9007)


【収録曲】
バレエ音楽『世界の創造』
・『ブラジルの郷愁』より
バレエ音楽屋根の上の牛
スカラムーシュ
・マルティニック島の舞踏会
・パリ(4台のピアノのための6つの小品)
・エクスの謝肉祭
フランス組曲
プロヴァンス組曲


【演奏】
フランス国立管&レナード・バーンスタイン(指揮)
モンテカルロフィルハーモニー管&ジョルジュ・プレートル(指揮)
ミシェル・ベロフ、ジャン=フィリップ・コラール(ピアノ)ほか

けっこう面白い


ダリウス・ミヨーDarius Milhaudの音楽を聴いてる。
ブリリアントクラシックの新譜。
もともとEMI音源のやつだ。


ミヨーは、20世紀フランスの多作な作曲家。
いまではすっかり忘れられたといっていい。


この2枚組CDには、オケ曲からピアノ曲まで、
いろんなのが入ってる。


ミヨーの作品はたまに聴くんだけど、
けっして、つまらなくはない。
むしろ、面白い


もちろん、嫌いではない。
むしろ、好きだ


ハーモニーはしっかりしてるし、
リズムはゴキゲンだし、
メロディだって、ときに美しい。


ミヨーはエクサンプロヴァンス生まれらしい。
南仏の明るい響きと言われれば、そんな気がする。


日本人女性のあこがれの地、
フランス・プロヴァンス地方出身で、
輝かしい20世紀前半のパリで、
気の利いた音楽を作った人。


モテそうな要素満載だ。


でも、なぜかミヨーは人気がない。
昔はどうだか知らないが、
いまじゃ明らかにモテない音楽だ。

モテるクラシック曲の条件とは?


はて?


なにかおかしい。


どうしてだろうと考えた。


そこで思い至ったのは、
人気のあるクラシック曲に共通するふたつの要素だ。


深刻さと、ロマンチック。


モテるクラシック曲というのは、
深刻な曲か、ロマンチックな曲か、どちらかなのだ。


ミヨーの音楽には、そのどちらも欠けている。


まず深刻さ
意味ありげな感じと言ってもいい。


ベートーヴェンをまず思い浮かべたい。
彼の音楽ほど深刻で意味ありげなものはない。


ブラームスブルックナーを思い出してもいい。
重厚とか、高遠とか、そんな言葉で代えてもいい。


ミヨーの音楽には、まったくそんな要素はない。
ラテン的にちゃらんぽらんで、あっけらかんとしている。


さてもうひとつは、ロマンチック
リリシズムとか、繊細さとか言ってもいい。


ラフマニノフあたりを思い浮かべたい。
彼の音楽ほどロマンチックで叙情的なものはない。


ショパンラヴェルを思い浮かべてもいい。
繊細で女性的、そしてときに孤独な音楽だ。


ミヨーには、どうもそういう要素が欠けている。
同じフランスの作曲家なのに、
ラヴェルやサティのような、悲しげな陰がない。


だから、男性にも女性にも、
ミヨーの音楽は好まれないのだ。


悲しきミヨー。

芸術らしくなくたっていいじゃん!


ではミヨーの音楽の特徴とはなんだろう。


陽気さだ。


ちゃらんぽらんさだ。


要するに、愉快なのだ。


愉快な音楽というのは、
ポピュラー音楽では歓迎されるのに、
クラシック音楽では歓迎されないのだろう。


合衆国の作家、エドガー・アラン・ポーPoeが、
「アッシャー家の惨劇」のような深刻な作品や、
アナベル・リー」のようなロマンチックな作品ばかり読まれて、
ユーモア小説のほうはすっかり忘れ去られているのと
似たような状況かもしれない。


ゲージュツには深刻さかロマンチックな幻想が必要で、
陽気で愉快なものは、ゲージュツらしくないと思われているのだろう。


だからミヨーはクラシック音楽の異端だ。
前衛のシュトックハウゼンクセナキスよりも異端だ。
(前衛には深刻さがつきまとうから)


しかし、そんなゲージュツのゲージュツくささ
21世紀の現代人は、さすがにうんざりしてきたのではないかしらん?


深刻でロマンチックなゲージュツ作品に、
うさんくさささえ感じてきたのではないかしらん?


もしもそうだとすれば、ミヨーの出番だ。


陽気で愉快なクラシックを楽しんだっていいじゃないか。


21世紀のゲージュツは、
あっけらかんとしてちゃらんぽらんだっていいじゃないか!


だからたまには聴いてみよう。
ダリウス・ミヨー


聴けば意外と楽しめると思うんだ。


ただ、正直なところ、
時代はまだ、そこまで進んでないかも知れないなあ。


だから、いまのところは、
こんな音楽を聴いてても、もてないんだなあ。


喜劇的なミヨーの悲劇的な不遇は、
もう少し続きそうだ。